初夏の嵐 「つーかさ、なに、なんかあったの」 「なに、といいますか、まあ、ナニですよ」 「ちーちゃん意味わかんないよ」 「おや、僕と君は心で繋がり合っていると思ったのですが…それは残念です」 適当なことを言って話を逸らそうとするちーちゃんはどうやら事情を説明する気はないらしい。 仕方なく、俺は石動様石動様とちーちゃんの周りをちょこまかする美少年たちに目を向けた。 アイコンタクトに気付いた美少年たちは小さく頷く。 「石動様はなんも悪くないんです。『君、頭もじゃもじゃしてますね。下の方もそんな感じなんですか?』ってフレンドリーに話し掛けただけなのに、あの転校生!美しい石動様のお顔に!」 ああ、なんだ、自業自得か。 「それで、あの転校生はー?」 「他のやつに頼むって言ってましたね。ふふ、この学園で僕以外に案内役を買う人間がいるかどうかも怪しいというのになかなかの勇者ですね」 頬を撫で、にこにこと笑いながら続けるちーちゃん。 ちーちゃんはさして殴られたことに対して気にしていないようだが、ちーちゃんの取り巻きたちは無視することが出来ないようだ。 可愛らしくぱっちりした目には各々薄暗い怒りが滲んでいた。 この目には、見覚えがある。 大切な仲間をやられた者の復讐を宿らせた目だ。 取り巻きたちの気持ちはよくわかる。 俺だって大事な友達傷つけられたらむかつく。 第一、いくら自業自得だとかいっても限度はある。 結局ちーちゃんは涙ぐむ取り巻きたちに引き摺られ保健室へと連れていかれた。 「…仙道さん」 ちーちゃんたちがいなくなったあとの校庭。 ちーちゃんたちの姿を見送る俺の様子からなにか悟ったのか、純たちが俺に視線を向けた。 「んー?なぁに?」 「どうしますか?」 「どうしますかってなにがぁ?」 「石動千春のことです」 「どうもこうも、俺には関係ないことだしねー」 それだけ言って、俺は歩き出す。 暖かい日差しと心地よい気温の校庭に強い風が吹き、緑の木々がざらざらと音を立てた。 なんだか面倒になりそうだなあ。 風紀委員の仕事が増えなきゃいいんだけど。 まあ、そんな俺の希望もあっさり叩き潰されるわけだけどね。 |