アグレッシブサボり魔 「……っうわー、びびった。よーへい君かよ」 「こっちも驚いた。………どうしたの?」 「えーと、ま、ちょっと忘れ物しちゃってさ。…そっちは?体調崩したんじゃねーの?」 どちらかといえば真面目に授業受けてるようなよーへい君がこんな時間にこんなところにいるのが俄信じられなくて、なんとなく気になって尋ねてみれば目を伏せたよーへい君は「そういうことになってる」と小さく呟いた。 ということは、 「あ、なんだよサボり君かー。いけないんだー。せんせーに言っちゃおー」 まさかよーへい君がそんなことするとは思わなかった。だってなんか見た目からして制服も着崩さないような真面目ーって感じだし。 そんな意外性にちょっぴりからかってやろうとした矢先だった。 「ん?俺がなんだって?」 「うわっ!」 すぐ背後。 頭の上から聞こえてきたその声に飛び跳ねそうになった。 無表情のまま、「先生」と背後へと視線を移すようへー君は相変わらずのポーカーフェイス。ようへー君の心臓はどうなってんのだろうか。 俺たちの背後、どっから現れたのかいつの間にかにそこに立っていた顧問の凩は笑う。 「せんせー、まだ居たの…」 「いつもならとっくに寮に戻ってんだけどな、この時間帯。最近忙しいんだよ、お前らと一緒で」 「で?こんな時間になにしてんだ?お前も調べ物か?」と相変わらず軽い調子で尋ねてくるせんせー。 って、……も? 釣られてようへー君を見るけどようへー君は相変わらずどっか見て知らん顔。 「…っと、いや、ちょっと携帯落としちゃったみたいでさ。食堂に探しに行こうと思って」 「ま、そんなことだろうと思ったよ。お前が勉強するわけないもんなー」 「なにそれ、すごい失礼なこと言われた気がすんだけど」 「……というか言われてる」 ぼそりと呟くようへー君。 え、まじで。許せん。と精一杯怖い顔してせんせーを睨み付ければ全く効果がないようだ。それどころか宥めるように頭を撫でられてしまう。 「ちょっともー、やめてよ」 「はは、ま、その行動力は褒めてやるが時間外の侵入は禁止されてんの知ってんだろ?」 「え、何それ初耳なんですけど」 「お前もっとましな嘘吐けよ」 おお、これは失敬。 「携帯だったな。探してきてやるからお前は寮に戻ってろ。各務、お前も真っ直ぐ部屋に戻るんだぞ」 「いーよいーよ、俺自分で行くから。…いてっ」 「だからそれがダメだって言ってるだろ?いいから待ってなさい。見回りに見つかったら停学だぞ」 停学と言われたらなにも出来なくて。 いやでも停学になったら俺もマコちゃんと一緒にいることができるのかな、なんて。 そんなこと考えちゃったりしていると、不意にようへー君に肩を掴まれた。 「ん?」 「……外で待とう」 そして、「誰か来る」と俺の耳元で小さく呟くようへー君。 その言葉に、耳を澄ませて辺りを探ってみるが足音のようなものは聞こえない。 だけど、普段無関心貫いてそうなようへー君の忠告だからだろうか。余計無視することができなくて。 「はいはい。…じゃ、寮の入り口んところで待ってるから」 「だから部屋に…ま、いいか。わかった。なるべく早く戻ってくるからな。ちゃんとおとなしく待ってろよ」 まるで俺が大人しくないみたいな言い掛かりはやめてほしいな。なんて思いながら、俺ば渋々よーへい君とともに校舎を後にした。 |