そこにいたのは

扉を開き、辺りを探る。
既に消灯時間を過ぎたそこは真っ暗で、人気はない。

無人だし、まあ、これくらいなら大丈夫かな。
この調子だとエレベーターも動いてないだろうし、非常階段使うか。

念のため扉に鍵を掛け、通路を出た俺はそのまま学生寮を後にした。

夜、こうして出歩くのは初めてではない。
こっちにきたばかりのときはマコちゃんと一緒の部屋にいるのが嫌で、しょっちゅう寮から出て外を歩き回っていた記憶がある。
その度に怒ったマコちゃんに引き摺られて連れて帰られたんだっけ。
懐かしい記憶に、つい頬が緩んだ。

マコちゃんも、嫌だっただろうな。
いきなり一緒の部屋のやつが出来て、それも俺みたいなやつで。
前はよく喧嘩してたし、怒られたりもした。
そんなことを思い出すのは、なっちゃんと行動するのが多くなったからかもしれない。
文句言いつつも、いつも迷っていた俺の腕を引っ張ってくれたのがマコちゃんだった。
だけど、今ここにマコちゃんはいない。
それだけで、こうも不安になるなんて思いもしなかった。


「……」
 

さっさと取ってさっさと帰ろう。
純たちに見付かったらまた怒られるだろうし。

ひんやりとした夜の空の下。
足早に校舎へと向かった俺は、鍵が壊れてて閉まらないと生徒間で話題になってた窓から中に忍び込んだ。
壊れて、というか前代の生徒がわざと鍵を壊したらしいが、まあこの際どうでもいい。

開いた窓から校内通路へと降りたときだった。
視界の隅で陰が揺れる。
そして、


「……何してるの?」


真っ暗な校舎内。
聞こえてきた静かな声に、背筋が凍り付いた。
咄嗟に顔を上げれば、そこにはようへー君が佇んでいるではないか。
心臓に悪い。


mokuji
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