御守

悪鬼となったなっちゃんから引き離されるようにして他の風紀委員に付添われ(連行とも言う)自室へと戻ってきた俺。
一人の部屋はやはり広い。
それ以上に、冷たく感じた。

風紀委員はヒズミが抜け出したこと知らないみたいだった。
ユッキーといい、純といい、二人の情報網は信頼出来るしヒズミが抜け出したことも事実なのだろう。
それなのにヒズミの脱走が伏せられている理由は、なんとなくだが考え付いた。

ヒズミが抜け出したと知ったら、風紀はなんとしてでも探し出そうとするだろう。
学校全体が不穏な空気に包まれている今、学校側は下手に事を荒立てたくないのだ。
もし、謹慎中のマコちゃんの耳に入ってみろ。そうならないと思っていても、やはり、もしマコちゃんがなんとしてでもヒズミを見つけ出そうとしたらと考えると血の気が引いた。

出来ることなら、マコちゃんにはヒズミと関わってほしくない。
マコちゃんには普通の人で、俺の憧れのままでいてもらいたかった。
真面目で、頭がよくて、真っ直ぐで。
一生掛けても俺にはなれない、追いつくことが出来ないとわかっているからこそ、誰にも傷付けられず汚れずにいてもらいたかった。



携帯がない、と気付いたのは風呂から上がったあとだった。
寝る前にマコちゃんにイタズラメールしようかなと制服を探ったのだがそれらしきものは全く見当たらず、どこを探しても出てこない。

そして、俺は食堂でなっちゃんと食堂にそのままになっているということを思い出す。

…………取りに行かなきゃ。
別に、急な用があるわけでもないし無いと死ぬというわけでもない。それでも、携帯でしかマコちゃんと繋がることが出来ない今、お守りみたいなものだったそれがないというのは結構ダメージでかいわけで。

一人で出歩くなと純やなっちゃんから散々口煩く言われたことを思い出し、仕方なく誰か呼ぼうとしたが肝心の携帯がないし。


「……あぁ、面倒くさいなあ…もう…」


mokuji
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