第一次お肉戦争

『なんだよ、また確認せずに電話に出たのか?』

「えへへ、なんとなくマコちゃんだと思ったからさぁ」

『嘘だな』

「バレたか…………」

『……全く。相変わらず元気そうだな。今電話して大丈夫だったか?』

「うん、全然いいよー!」


マコちゃんの声を聞くだけで、自然と背筋が伸びた。
目の前にいないとわかっててもつい満面の笑みで返してしまう俺に、小さく舌打ちをしたなっちゃん
お、ヤキモチか。
なんて思った矢先、箸を手に取ったなっちゃんはそのまま俺の皿の肉をあろうことか取り上げやがった。
そして、そのままぱくりと一口で頬張るなっちゃん。


「あっ、ちょっとなに食べてんだよー!」

「うるせえ、子守代ぐらい寄越せ!」


なんだとコノヤロウと、持ってた携帯端末をその顔面に投げつけてやろうかと思った矢先。


『千夏もそこにいるのか?』


聞こえてきたマコちゃんの声にハッとする。


「聞いてよマコちゃん、今なっちゃんが俺の肉食ったんだよー」


「マコちゃんからも怒ってよ」と続けようとしたとき、伸びてきた手に携帯ごと取り上げられる。
あっと顔を上げればごくりと喉を鳴らし、肉を飲み込んだなっちゃんがそこにはいた。


「委員長。俺もう嫌っすよ、こいつの面倒見るの。すぐ逃げ出すわ風紀騙すわ手に負えません」

「マコちゃんに適当なこと言うなっつーの!馬鹿なっちゃん!金髪アホ毛〜!」

「うるせえお前もだろうが!!」


叩かれた。痛い。

そのまま頭掴まれ無理矢理引き離された俺。
くそう、少しでかいからといって人をひょいひょい扱いやがってくそう……。


「え?あー、よく聞こえねえ。今外出るんで」


乱れた髪を撫で付けていると、携帯を手にしたままなっちゃんはバルコニーの方へ歩いていく。
どうやら俺はお呼びではないということらしい。
俺宛の電話なのに、と不満を覚えずにはいられないが、今がチャンスなのは確かだ。
なっちゃんの背中が見えなくなったのを確認して、俺はなっちゃんの皿に乗ってる肉を二切れ口に放り込んだ。


そして、数分してなっちゃんは戻ってきた。


「本当、あいつどんだけ心配性なんだよ…こんな図太そうなやつ放っとけばいいのに…っておい!なに食ってんだ!」

「ふっへはいへほー?はひははっへひふほひはんはほー」

「とぼけんな!しっかり口に入ってんだろうが!!」


くそ、ついでに3切れ目と欲張ったのが仇となったらしい。
怒り狂うなっちゃんから皿の肉を守りつつ相手の皿から肉を奪うという戦いが幕を開いた。
数分後駆け付けた他の風紀たちに止められすぐに幕引きとなったのは言うまでもない。

mokuji
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