短気と呑気のお食事会 ヒズミが抜け出した。 放課後、聞かされたその言葉は数時間経っても俺の頭にこびり付いて離れなかった。 そして、夜。 「てめえは風紀をなんだと思ってんだ、便利屋か?!ああ?!」 「……うー、だから悪かったって言ってるじゃん」 「言ってねえよ!」 あれ、そうだっけ?と思いながら、俺は目の前で憤怒するなっちゃんから目を逸らす。 あの後、全て俺のハッタリだったことを知ったなっちゃんに捕まってしまって現在に至るわけだけど。 腹を満たせば少しはなっちゃんの怒りも収まるかな?と思って食堂までやってきたのに、なっちゃんの怒りは収まるどころかなんかでかくなってるような気がしてならない。 「唯でさえ評判が悪くなってるっつーのに、冤罪押し付けてしまったら更に悪くなるだろうが!」 「大丈夫大丈夫、あの二人絶対真っ黒だから」 「てめえが言うな!」 「ほら、なっちゃんフルーツポンチあげるから落ち着いて〜」 「いらねえ!」 えー、美味しいのに。もったいない。 まあ最初からあげるつもりはなかったからいいか。 なんて思いながら、デザートを一口食べた時だ。 どこからか携帯の着信音が聞こえてくる。 人は多くない食堂内、誰の携帯かはすぐにわかった。 「はあ?もしもし?」 そういって携帯を取り出したなっちゃん。 すげー電話でも喧嘩腰。 「ああ?それくらいそっちでなんとかしろ!こっちは子守で忙しいんだよ!」 携帯に向かって怒鳴りつけたと思えば、いきなり通話を終了させるなっちゃん。 携帯から微かに聞こえた慌てたような声に同情しつつも、なっちゃんの口から出たとある単語に引っかかる。 「ねえ、もしかして子守って俺のこと?」 「てめえ以外誰がいるんだよ」 「何それひどーい」 なんて言い合いしてる内にまたなっちゃんの携帯電話が鳴り始める。 矢先、出もせずなっちゃんは電話を切った。 「っくそ!」 苛ついた様子で携帯端末をテーブルの上に叩きつける勢いで置くなっちゃん。 相当苛ついてるらしい。少しは心の広い俺を見習って大人になれないのだろうか。 「…………忙しいんなら行ってきてもいいんだよ?」 「もうその手には乗らねえからな」 「チッ」 「この野郎…」 すると、また電話が鳴り始める。 しかし、テーブルの上に置かれたなっちゃんの携帯は反応していない。 ………ということは。 「はいは〜い」 制服のポケットに突っ込んだままになってた携帯を取り出し、そのまま電話に出ると、端末から懐かしい声が聞こえてきた。 『京。俺だ』 「マコちゃん?」 聞きたかったその声に、マイナス値に行きそうになっていた俺のテンションが一気に上がるのがわかった。 それと同時に、向かい側に座るなっちゃんの顔が更に不機嫌そうなものになっていた。 |