吉か凶か

無事生徒会室から脱出した俺。
ついなっちゃん置いてきてしまったけど、まあいいや、仕方ない仕方ない。
今からどうしようかな、マコちゃんのお見舞い行こっかな、と考えている時だった。


「仙道さん!大変です!」


血相を変えた純が駆けつけてくる。
なんつータイミングのよさ。
取り出しかけた携帯をポケットに仕舞い、俺は純を振り返る。


「なに?どしたの、そんなに慌てて…」

「そ、その…非常に言いにくいんですが………」


「仙道!」


名前を呼ばれ、今度はなんだと振り返れば、そこには顔色を変えたユッキーがいる。
なんだなんだ、次から次へと。普通に良い予感がしないんだけど。
俺達の元までやってきたユッキーは、俺の横に居た純に少しだけ驚いたような顔をした。


「あれ、なんだ純、お前も来てたのか。なら、もう聞いたのか?ヒズミが病院から抜け出したって」


「へー…………って、は?」


ん?抜け出した?誰が?
…………ヒズミが?

……………………はい?


「お、おい、もっとオブラートに…」

「さっき病院から職員室の方に連絡が行ったらしい。検診に行ったら病室の窓が壊れてたって」


「そんで、ベッドは空」と肩を竦めるユッキーの言葉は最早頭に入ってこなかった。
ヒズミが脱走した。
その言葉を理解した瞬間、頭の中が真っ白になる。
文字通り思考停止する脳味噌を無理矢理叩き起こし、俺はユッキーを見上げた。



「……ちょっと待ってよ…ヒズミが抜け出した?動けないくらいの重体なんじゃ……」

「だから、誰かが手伝ったんだろうって俺は踏んでる。じゃないとあの怪物野郎でも無理だ」

「でも、あいつを手伝うようなやついるのかよ!」


その純の言葉に、脳裏に数人の顔が思い浮かんだ。
生徒会室に入り浸り、かいちょーや双子庶務と愉しそうに騒いでいたヒズミの姿が蘇る。


「…………」

「でもまあ、いくら病室を抜け出したからといってあいつも本調子じゃないしな。寧ろ、俺は好機だと思ってるよ」


「なあ、純」と純の肩を叩くユッキーは笑う。
いつもの人良さそうな笑みの裏、よからぬことを考えているのだろう、嫌なものを感じた。それは純も同じだったようだ。


「お、おい、あんたなに考えてんだよ。まさか…」


「潰すなら今だろ」

「……ユッキー」


やられたら倍にしてやり返す。
そんなユッキーを知っているだけに、引き止めたところで聞いてくれないというのはわかっている。
だけど、出来ることならヒズミと関わってほしくない。
そう思わずにはいられなかった。


「なんて顔してんだよ、仙道」


どんな顔をしてたのだろうか。
可笑しそうに笑ったユッキーはくしゃりと俺の頭を撫でた。


「もちろん見つけたらの話だぞ?他の奴らにも探させてるけどどこにいるかすらわからねえ。念のため、お前も気をつけておいてくれ。

…………ヒズミが現れるとしたらあんたの前だからな」


mokuji
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