強制連行

ちーちゃんが喋ってちーちゃんが賛同してちーちゃんが締める会議という名のなにかが終わり、さっさと生徒会室から出ていこうと扉を出たとき。
扉の横。
待ち伏せしている金髪頭に「あ」と声を漏らした。


「『あ』じゃねーぞ!何考えてんだよてめえ!」


そういって、金髪頭もといなっちゃんは噛み付く勢いで掴み掛かってきた。
やばい、すっかり忘れてた。


「どうしたんですか仙ど……おや、千夏」


続くようにやってきたちーちゃんは、そこにいた双子の弟の姿に少しだけ驚いたような顔をする。
それも一瞬。


「発情期の犬のようにきゃうんきゃうんと。周りに迷惑ですよ」

「うるせえ!てめえはすっこんでろ!」


「なんだなんだぁ?風紀のわんこがなんの用だ。迷子か?」


なっちゃんの馬鹿でかい怒鳴り声に反応するかのように他のやつらも続いて顔を出す。
そんな中、現れたかいちょーになっちゃんは顔を顰める。


「次から次へとわらわらと…ッ!おい、終わったんならさっさと来い!」


反応する暇もなく腕を掴まれる。
そのまま引っ張られそうになったとき、「ちょっと待てよ」とかいちょーはなっちゃんを止めた。


「それは置いていけ。こいつにはまだ仕事が残ってんだよ」

「はぁ?」


そういち早く反応したのは俺だった。
仕事が残ってるとか初耳だし。つーかそれって俺のことですか。なにそれ。


「仕事?生徒会がなんの仕事だよ。ただくっちゃべって遊ぶ仕事か?あ?」

「おや、人聞きの悪い」


と、いうわりには嫌そうではないちーちゃんの横、「「ま、だいたい合ってるけどねえー」」と双子庶務は声を重ねる。
俺からも異論はない。


「ま、そーいうこった。常日頃くっちゃべって遊んでるから溜まりに溜まってんだよ」

「否定しろよ…」


開き直るかいちょーになにも言えなくなるなっちゃん。
諦めるかと思いきや、舌打ちをしたなっちゃんはそのまま壁に凭れるように座り込んだ。


「用があんならさっさと済ませろ。その代わりここで待たせてもらうからな」

「勝手にしろ」


え、許しちゃうの、それ。
人相悪いのに生徒会室の前で待ち伏せされてたらまた生徒会の評判下がっちゃうんじゃないかなーって思ったけど元からあれだったね。ならいいや。


「おい、会計。こっちに来い」

「……」


でもだからってこいつの言う事は聞きたくないんだよねー、俺。


「残念でしたね、会長。仙道は貴方と一緒の空気を吸うのが嫌で嫌で堪らないようです」


「仕方ないですね、でしたら僕もご一緒します。それなら千夏も安心でしょう?」と笑うちーちゃんに、なっちゃんは「安心できない要素が増えただけじゃねえか」と吐き捨てた。
うん、まあ、否定できないしフォローも出来ない。


「まあ、少しくらいなら仕事、手伝いますよ。では日が暮れない内にさっさと終わらせましょう。この後予定が入ってるので」

「本当、かいちょーも副かいちょーも物好きだよねえ」

「じゃ、僕達はお先に帰らせてもらうよー。誰かさんの尻拭いに時間費やしたくないしね」

「はいい?なんだってえ?」


「はいはい仙道行きますよ、おやつ用意してあげますので早く行きましょう」


双子に一発蹴りでも入れてやろうかと振り返れば、強引にちーちゃんに背中を押される。
そして俺は半ば強制的に生徒会室へと押し戻された。


mokuji
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