カルキとキスと炭酸飲料

ここ数日の間に何人からキスされたとか、そんなことを考えるだけで寒気がした。
咄嗟に殴り返すこともできず、ただ戸惑っていた自分がただ腹立たしくて、マコちゃんからのデートのお誘いによって昂ぶっていた気持ちはすっかり萎えてしまった。


「…もー、なんなの、ほんとさいあく」


駆け込んだ洗面所で、口を濯ぐ。
何度も何度も洗って、口の中に染み込んでいた炭酸飲料の独特の甘味料も丹念に洗い流した。
なのに、唇のあの柔らかい感触は取れない。


「……」


夢に出てきたらどーしよ。
なんて思いながら、口の中に溜まっていた唾を吐いた俺は洗面台から顔を上げた。
鏡張りの壁の前。
映り込んだ酷い自分の顔と数秒見つめ合った俺はぴしゃりと頬を叩く。
乾いた痛みで引き攣った顔の方が、少しはましだろう。

暫くは炭酸飲料は飲めないなぁ。
なんて思いながら、自販機へと戻った俺はカフェラテを選び、それを手にそそくさと自室へと帰った。

案の定、その夜は炭酸飲料の海に溺れる夢を見た。

mokuji
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