優等生と優等生モドキ



どれくらい振りだろうか、席について授業を受けるなんて。
教室を陣取って教師で遊ぶことはあったが、こうして教師の言葉を聞くのはホント久し振りかもしれない。

授業が始まって数十分。
そろそろ教師の顔を見るのも飽きたので勉強してやろうかと机の中を漁ってみれば、中にはかぴかぴのティッシュと菓子の空き箱、つまりゴミだけが入っている状態で。


「…教科書持ってきてねーや」


というか、部屋を出た時点で手ぶらだし仕方ないっちゃ仕方ないけど。
これは寝て過ごすしかないな。うん、そうだ、そうしよう。
一人納得したときだ。
すっと、横から教科書が置かれる。


「……」


現れた物に「んっ?」と目を丸くする俺。
隣を見れば、ノートを拡げ、真面目に授業を受けていたよーへい君がこちらを見ていた。


「…これ、使えば」

「いいの?」


こくりと頷くよーへい君は、ぽつりと呟く。


「内容、暗記してるから」


なにそれさらっとすげえこと言ってませんか。

借してもらえるのは有り難いが、やっぱりこう、してもらいっぱなしってのは慣れないわけで。


「じゃあさ、一緒に見よ?」


考えた末、そう提案すればよーへい君はやはりどこかなに考えているのか分かんないような無表情のまま黙り込み、そして、小さく頷いた。


「……わかった」


どこか人を避けるような雰囲気を持ったよーへい君だからだろうか。自分を受け入れてくれるのが嬉しくて、えへへへと破顔しながら俺は隣のよーへい君の机に自分の机をくっつけた。
あ、俺の机じゃねーか。



mokuji
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