臨時優等生

なーんつーかさぁ。
なーんつーか…………。


「時間がない。朝飯は抜け。見計らってあとで俺が教室まで届けるからそれまで教室で授業受けてろよ。あんたの席の周りは風紀のやつらで固めてるから余計な心配はすんなよ」

「…」

「おい、返事は!」

「……なっちゃんって、やっぱりちーちゃんと兄弟なんだね。口うるさい所とかすげーそっくり」



あと無駄に細かいところとか。
たっぷりの厭味を込め、呆れたようにそう呟けば、みるみるうちに千夏もといなっちゃんの顔が恐ろしいことになっていく。


「てめえ…喧嘩売ってんのか…!」


まさかのマジギレ。
よっぽどちーちゃんと一緒にされたのが癪に障ったらしい。もしかしたらなっちゃん呼びも不味かったのかも。どっちでもいいけどね。怒鳴られたから、ちょっとした仕返しだから。
でもやっぱおっかねえ。


「じょーだんだってば、じょーだん」


なるほど、なっちゃんはちーちゃんの名前を出したら機嫌が悪くなる、と。
あとでメモしておこう。

教室前。
もうすぐHRがあるはずだが教室の人はまばらで。
そりゃそうだ、こんな朝からご丁寧に席に着くやつなんて素直馬鹿もいいとこだし。
そんな素直馬鹿なやつらは教室前で喋ってる俺達の方をちらちらと気にしているようだ。
直接突っかかって来ないだけ可愛い方だろうが、向けられる視線に嫌なもんを感じてユッキーが言ってた噂のことを思い出した。

あー、ほんとやだなぁ。
なんて思いながらなっちゃんと別れ、教室に入ろうとしたとき、「おい」となっちゃんに呼び止められる。


「ちゃんと授業聞けよ…って、委員長がいってた。…一応伝えとく」


それを言われたら真面目に聞くしかないじゃないか。
「はぁい」と俺はなっちゃんに手を振り返した。
俄然、やる気出てきた。
今日は面倒なこと全部忘れて、真面目くんでいよう。
なんて密かに意気込みつつ、教室に入ったはいいが一回も教室で授業を受けたことがない俺は自分がどこの席か分からず、適当な席に座る。


mokuji
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