訪問者


翌日、結局一人のベッドで眠っているとき。
どんどんと部屋中にけたたましいノック音が響いた。
何事かと飛び起きた俺は舌打ちをし、そのままずるずると重い体を引き摺るようにして扉を開く。


「……はぁああい」


言いながら、そこに立っていた人物を見上げた俺はそのまま硬直した。
色を抜いたような派手な金髪頭。
率先して風紀を乱してそうな不良風紀副委員長は、俺の姿を見るなり眉を顰めた。


「おい、おっせーんだよ。…って、まだ着替えてねえのかよ。何時だと思ってんだ!」

「…何時って、まだ8時じゃーん…」

「もう8時だよ!遅刻すんだろ、さっさと着替えて来い!」

「はぁ?なんで俺が…つかなんで君がここにいるわけぇ?」


そうだ、そこが問題だ。
朝っぱらからがみがみと小煩い副委員長、石動千夏に俺は尋ねずにはいられなかった。

 
「お前、委員長からなんも聞いてないのかよ」


すると、呆れたように俺を睨む千夏。
…そういや、この前病院いった時、マコちゃんこいつを頼れとか言ってたような。
って、こういう意味だったの。


「委員長はお前が心配だからって俺に護衛頼んできたんだよ。…じゃねえとわざわざやってられっかよ、おもりなんて」


後半部分は聞かなかったことにするとして、マコちゃん、こいつにわざわざそんなこと頼んでいたのか。
どうせならもっと静かなやつにしてくれたらいいのにと思う反面、俺をか弱い一般人と思ってわざわざ護衛までつけてくるマコちゃんに愛しさは積もるばかりで。


「わかったんならさっさと着替えて来い、俺まで遅刻したらどうすんだよ」


マコちゃん…とときめいていると、無粋な言葉が飛んでくる。
雰囲気ねーやつだなと思いながら「じゃあ先行ってればいいじゃん」とじとりと視線を向ければ、びきびきと石動千夏の額に青筋が浮かぶ。


「てめえ、人の話ちゃんと聞けよ」

「はいはぁい、じゃあちょっと待っててよ。着替えてくるから」


このままでは本気で張り倒されそうなので、俺は促されるがまま自室に引っ込んだ。



mokuji
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