終末的究極の選択

(佐倉純視点)


一瞬言葉を理解できなかった。

だって、仙道さんからそんなことを言い出すなんて思いもしなかったし。
第一、


「え、あ、でも……いいんすか?」

「ん?」

「だっ、だってここ、お二人の部屋なんでしょう」

「別に、新婚さんの寝室じゃないんだからそんなに気にする必要ないっしょ」

「だって、仙道さん嫌がってたじゃないですか。この前」

「うん。でも、今は怪我してんじゃん」


言いながらぺしっと足を叩かれ、小さく身動いで仙道さんから逃げる。
昔から、仙道さんは干渉されることを嫌がる。自分のテリトリーには簡単に他人を踏み込ませないし、部屋なんてプライベートの塊みたいなもんは尚更だ。
こうして自分が相部屋とは言えど仙道さんの部屋にいるということ自体俄信じ難いというのに、泊まれなどと。

もしかして、試されているのか?
そう思えば急に緊張してきた。


「嫌ならいいけど?純の好きにすればぁ?」


なにも答えない俺に痺れを切らしたらしい。
ぷいっとそっぽ向く仙道さんの横顔はどことなく寂しそうで。
これは、素直に甘えたほうがいいんではないか。
そう思い立った俺は慌てて立ち上がる。
そして、恐らく敦賀真言が使っていたであろう整ったベッドに駆け寄った。


「な、なら!こっちのベッド借りていいですかね」

「は?何言ってんの、駄目に決まってんじゃん。マコちゃんの匂いが消えちゃうから純はソファーね」


え、何この扱い。
しかも即答。


「あ、でも体痛いかー……」


しかし、俺が怪我人ということを思い出したらしい。
少し考え込んだ仙道さんはゆったりとした動作で立ち上がり、もう一つのベッドに腰を下ろす。
そして、その隣をぽんぽんと叩いた。


「仕方ないなー、なら、こっちおいでよ。入れてあげるー」


もしかしたら明日は火の雨でも降るのだろうか。


mokuji
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