空いた部屋に一人と一匹


「…ッ」


湿布が剥がれないよう、見様見真似で足首をテープで固定したとき。
びくんと跳ね上がる純に、思わず「はは」と口から笑い声が出てしまう。
涙目の純は睨むように俺に視線を向けた。


「…なんで笑うんすか」

「なんか、純の顔が梅干し見たいになってたから」

「ひっでぇ」

「ごめんて……あ」


丁度そのときだ。
部屋に取り付けられたスピーカーから、消灯時間を示すチャイムが響いた。

同時に部屋の照明が消え、咄嗟に俺は明かりの代わりに携帯電話を取り出す。
しかし、これだけでは頼りないのは明らかで。


「消灯時間、間に合わなかったねぇ」


指定された消灯時間が過ぎれば寮内の施設は勿論エレベーターも機能しなくなる。
階段があるので登り降りできないというわけではないが、やはり、視界が利くと利かないじゃ大分変わってくるわけで。

それなのに。


「いいっすよ、別に。夜目利くんで」


ソファーから立ち上がろうとする純に、咄嗟に俺はその裾を掴んでいた。
薄暗い視界の中。
きょとんとした純と、確かに視線がぶつかった。


「…泊まっていけば?」

「え?」

「だから……部屋まで降りるの、エレベーター使えないし階段辛いでしょ。その足じゃ」


mokuji
[ Bookmark ]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -