誰のための応急処置 「あ、あの、仙道さん…」 「んー?」 「良いんですか、俺、部屋に入れて」 マコちゃんがいなくなって、やけに広くなった自室内。 どことなく緊張した様子の純をソファーに座らせ、適当な飲み物を用意してやる。 「本当はダメなんだけどね、純は特別」 言いながら、テーブルの上にバカみたいな色をしたジュースを注いだグラスを置けば、「え」と目を丸くした純は俺を見上げた。 それを無視して、俺は純の足元に屈み込む。 「ほら、足出して」 「っちょ、なに……」 足を持ち上げ、そのまま裾を捲りあげれば何事かと純は赤くなったり青くなったりと動揺しだす。 ジタバタする純を押さえ込み、俺は足首に視線を留めた。 関節の部分、腫れ上がった足首は捻っているようだ。 ……やっぱり。 ジュースと一緒に用意した湿布とテープを手に取り、俺は純を見上げる。 「湿布。純のことだから、どーせ保健室行ってないんでしょ」 「う」 「俺、あんま器用じゃないからぐしゃっとなるかも知んないけど、我慢してね」 「動くなよ」と釘を刺しながら湿布のシートを剥がせば、逃げられないと悟ったようだ。 どこか拗ねたような顔のまま、純は「うっす…」と呟く。 いつもこんくらい大人しかったらいいのに。 なんて思いながら、俺は純が暴れ出さないうちに手当を済ませることにした。 |