青は停まれ というわけで、俺は信号機の三人組を護衛に学生寮まで戻ることになった。 消灯時間が過ぎ、いつも使ってるエレベーターが使えないのはダルかったけど階段があるので然程問題ではない。 他にあるとしたら……。 「でも、夜の校舎ってなんかすげー雰囲気ありますよね」 「おい、やめろよ、変なこと言うの」 「言ってねーよ、別に。ビビり過ぎなんだって、お前」 「はあ?ビビってねえし!」 肝試し気分なのか、ここがどこで今が何時なのかもお構いなしに大声ではしゃぐ後輩たち。 その中でも特に声が煩い黄がえらく暗闇にビビっているようで、少し脅かしてやろうかなと俺は前を歩く黄に近付く。 そして、 「……ふっ」 「ほわあああ!!!」 無骨なピアスがぶらさがるその耳に息を吹きかければ、ビクゥッ!と飛び上がりこちらまで脱力しそうな抜けた悲鳴が辺りに響き渡る。 やべえ、面白いけどすげえうるせえ。 「…君、静かにねぇ?」 「せ、仙道さんんん…………!」 耳を抑えたまま真っ赤になって俺を見る黄に、自然と口元が緩む。 後輩イジメ?違う違う、ただのスキンシップだってば。 「あーくそ、てめえの声でちびりそうになっただろ!ちょ、俺トイレ…」 黄同様、オカルト方面には臆病らしい赤は内股で床を足踏みし始めた。 「トイレならそこの突き当りない?」そう、奥を指差せば、青い顔した赤はすかさず駆けていく。 そして、 「あ、ありました!」 そう声を上げる赤。 すると、おずおずと黄も手を上げた。 「俺も、ちょっとトイレ……」 そして、じわじわとトイレへと向かう黄に青は諦めたように息をつく。 「お前ら連れションかよ、早めに済ませろっていってただろ。ほら、仙道さん待たせんじゃねえぞ!」 「わかってる!」とトイレの方から二人の声が跳ね返ってきた。 その場に二人残された俺と青。 どうせなら青もトイレに行ってくれた方がよかったのだが、二人に比べて用意周到なようだ。 トイレに行く素振りすら見せない。 なので、俺は正面切って行動することにした。 「じゃ、俺行くから」 そう、隣の青に小さく手を上げれば、俺は青が動くより先にそのまま駆け出した。 このままのほほんとアホヅラで後輩たちに庇われるのって、まあ普通にやだしね。 |