大量のラブレター

会議はすぐに終わった。
基本、体育祭について本腰を入れているのは体育委員会だ。生徒会は体育委員会が提出した書類を確認、訂正するくらいしかやることがない。
今年の体育副委員長は委員長に比べてわりかし頭が回る方らしく、こちらとしても大分助かっていたりする。
ってわけで、体育委員会に全て任せて適当に書類をなぞるだけの会議を終わった途端、糸が切れたように役員たちは席を立つ。


「じゃ、お疲れさ〜ん」

「おつかれー」

「……」


双子庶務にようへーくんと続くようにぞろぞろと生徒会室を後にする役員。
そんな中、俺はぼんやりと体育祭の書類を見詰めていた。
マコちゃんは体育祭までには戻ってくるだろうが、参加出来るのだろうか。
目の怪我も気になったが、もしかしたらあの時俺が気付かなかっただけで他にも大きな怪我をしていた可能性もある。
なにをしてても何を見ててもマコちゃんのことばかりが頭を過ぎり、無意識のうちに溜息が漏れた。
そのとき、ぽん、と肩を叩かれる。
驚いて振り返れば、そこにはちーちゃんがいた。


「仙道、帰らないんですか?」

「んー帰るけど…」

「一人は心細いですか」


にこにこと、なにかを含んだような物言いをするちーちゃんに俺は「別に」とだけ呟いた。
きっと、バレているのだろう。俺がマコちゃんのことに気を取られていることは、とっくに。


「あ、そうだ。この前は病院の場所教えてくれてありがと」


気恥ずかしくなって、咄嗟に話題を変える俺。
あからさますぎたかな、と思ったがちーちゃんは変わらない笑みで返してくれる。


「お礼は体で構いませんよ」


最低な返し方で。


「それじゃ、ちーちゃんからお釣りもらわないといけなくなるじゃん」


どこのセクハラ親父だよ、と思ったが今更突っ込む気にもなれなかった。
「それは困りますね」と笑うちーちゃんだが全く困っているようには見えない。


「てかさ…会長、なんで休み?」

「さあ?遊んでるんじゃないんですか?別に珍しいことでもないですよ」

「ふーん…」


なんとなく空席になったままのかいちょーの椅子が気になったが、ちーちゃんもわからないとなればどうしようもない。
思いながらかいちょーの席に近付いた俺は、その上に書類の束が置かれていることに気付く。


「ん、なにこれ」


署名?
名前と学年がびっしりと書かれたその書類を手にした俺に、「ああ」とちーちゃんは思い出したように頷いた。


「それは風紀委員長リコール希望の署名ですよ。生徒会ボックスに大量にぶち込まれてたのでまとめたんですよ」


一瞬、思考回路が停止する。

mokuji
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