インドア推薦

そろそろ俺も帰るか。
寝起きの頭でぼけーっとしていた俺は小さく伸びをし、背骨を伸ばす。

そのとき、生徒会室の扉が開いた。


「お、なんだ。仙道だけか」


誰かと思いながら振り返れば、派手に弄った茶髪に黒スーツに派手な赤いカラーシャツというどこぞの胡散臭いホストみたいな男が一人。

生徒会顧問、凩(こがらし)。
下の名前は忘れた。


「どうしたの、せんせ。なにか用?」

「ああ、ちょっと緊急のな」


言いながら封筒から資料を取り出すせんせいはそれを俺に差し出した。
つられて受けとる。
それは一人の生徒の名簿のようだった。


「…誰これ」


黒くもっさりとしたもじゃもじゃ頭に宴会とかで使うようなぐるぐるの瓶底眼鏡がかなり不審な男子生徒のデータが記載されたその名簿に思わず眉を寄せる。
すっげえ、濃い。
名前欄には日桷和馬(ひずみかずま)と書かれてた。


「それ、うちの転校生」

「まじで」

「んでお前らに校舎案内してもらおうかと思ったんだけど」

「え?今日?」

「多分今門のとこにいるんじゃねえの」


急すぎますよ、凩せんせい。


「つーか今皆帰ったみたいなんだけど」

「いや、一人いるだろ」

「ぅえ?」

「お・ま・え」


ぽんと肩に手を置くせんせいは語尾にハートを散りばめた。きもちわるい。


「いや、や、やだって、なんで俺が」

「そろそろお前だって慣れてきただろこの学園に。いい機会じゃないか、転校生同士仲良くしたら」

「やーだー!絶対やだ!めんどくせーもん!せんせがいったらいいじゃないすか!」

「俺はこれから授業入ってんの。どうせお前このあとサボるんだろ?いいだろ、散歩と思えば」


こんな面倒な散歩があってたまるか。

なかなか折れようとしないせんせいに対し負けじと睨み返せば俺たちの間に沈黙が流れる。
ちょうどそのときだった。
生徒会室の扉が再び開く。


「どうしましたか、お二方。喧しい声でぎゃーぎゃー騒いでみっともないですよ」


ちーちゃんだ。

mokuji
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