言葉以外の意思伝達法

相変わらず何考えてるのかわかんない無表情だけど、今はただ、向けられたその目が俺を宥めているのは確かで。


「………おはよう」


張り詰めた空気の中、そう呟くよーへいくん。
あくまでもいつもと変わりないよーへいくんになんだか拍子抜けしてしまい、「おはよ」とだけ返した俺は東茅から手を離した。


「茅?大丈夫、茅?」

「大丈夫だってば。大袈裟だって、皐は」


泣きそうな顔をして自分の片割れに飛びつく皐に、抱き着かれた茅は苦笑した。
拍子に、東茅と目があう。
探るような視線が不快で、逃げるように背中を向けたとき。


「会計の馬鹿!野蛮人!」


テーブルの上に置いてあったカップを投げられる。
背中にぶつかり、かしゃんと音をたてて落ちるそれに振り返る俺。
中身が入ってなくてよかったと思う。
制服まで汚されたら、流石によーへいくんに止められても我慢できそうにない。


「おーおー喚くねえ、君」

「皐、いいから、もう」


落ちたカップを拾い上げれば、双子の兄の茅は慌てて皐を宥める。
その最中、双子たちはお互いに目配せをした。
なにを語り合っているのかわからなかったが、どうせろくなことではないだろう。

面倒くさいなぁ、もう。
やりきれない気分のまま、何事もなかったかのように自分の席へと向かう。
ピリピリとした気まずい空気の中、待つこと数分。
首筋にびっしりとキスマつけてきやがったちーちゃんが顔を出す。


「おや、もう皆さん揃ってるみたいですね。あ、会長は休むそうなので僕達だけで進めましょうか」


というわけで、なんとも面白くないメンツでなんとも面白くない会議がはじまった。

mokuji
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