許容範囲外 マコちゃんがいないというだけで、朝起きるのすら億劫になる。 どうせ生徒会役員の特権で授業サボってもごちゃごちゃ言われないし?結果的にだらだら夜ふかしして寝落ちて目を覚ましたら昼過ぎだったわけなんですけどね。 寝惚け眼のまま制服に着替え、部屋を後にした。 一日中寝ていたいところだけどそういうわけにもいかない。 今日は生徒会会議がある。 多分内容は来月の体育祭のことで占められるだろう。 面倒だけど、会議をサボったら後先面倒なので一応出るだけ出ることにしてる。 でも、やっぱり気が進まない。 と、憂鬱な気分のまま俺は生徒会室へと向かう。 離れたところから純が後つけてるのに気付いたが、本人としては隠れているつもりなのだろうからそっとしておく。つーかめっちゃはみ出してるからね、あいつ。 というわけで、純に見守られながらやってきた生徒会室前。 扉を開けば、はしゃぐ双子庶務に迎えられる。 「あーきたきた、フェラ男だー!」 「おっはよーフェラ男君!」 「…」 「ねえねえ、カズマのしゃぶったんだって?すごいねえ!ね、今度僕のもしゃぶってよ」 「あー皐ずるいー!俺も俺もー!」 わあ、なんて素敵なお出迎えなんだろうか。 近くにバットがあれば即殴りかかれたのに。 なんて思いながらも構う気力もなかった俺は纏わりついてくる双子を振り切るように自分の席へと向かう。 どうやら来ているのは双子だけのようだ。 めんどくせー。 「でも、意外だなぁ。あんなに嫌がってんのに、しっかりカズマの相手してんじゃん。あ、もしかして風紀のもしゃぶってんの?」 「あ、だからあんなに仲いいんだ!なんか納得!普通、風紀と会計って相性悪そうだもんねえ」 「体の相性はってやつ?」 「うわー!茅おっさんみたいー!」 きゃいきゃいとはしゃぐ双子。 なんとなく、どっちがどっちかわかるようになってきた。 無駄に突っかかってくるのが茅で、それを持ち上げるのが皐。 ま、どっちがどっちだからといってそんなこと俺にとったら些細な問題なわけで。 ガンッ、と派手な音を椅子が倒れる。 どうやら無意識のうちに蹴り倒してしまっていたようだ。 無意識こえー。 めっちゃ双子目丸くしてこっち見てる。 きょとんとした顔は可愛いけど、だからといっておおめに見ることができるほど俺は優しくもないし辛抱強くもない。 「……あのさぁ、俺のこと言うのはどーでもいいけど、マコトのこと言ったらまじ許さねえから」 うん、結構俺って熱血なんだね。今知った。 笑ってみるけど顔の筋肉が引き攣って、うまく笑えない。笑える要素なんてまったくないんだけどね。 「は……なにそれ、あっつーい。ラブラブじゃん」 「つーかなにまじになっちゃってんの?そんなに彼氏のこと言われるの頭に来ちゃった?」 「でも、敦賀真言もカズマと一騎打ちなんてさぁ、愛されてるじゃん。三角関係ってやつ?その割りには会計のケツ緩いみたいだけど」 「君さあ、よく喋るねえ」 椅子を蹴り飛ばしても人間を蹴るのは我慢しようと思っていたけど、うん、やっぱり無理。 東茅のネクタイを思いっきり掴み、無駄にでかい図体を強引に俺の視線に合わせた。 茅に手を出した俺に焦ったのか、「ちょっと」と皐が青褪めたが、茅は動揺を見せない。 「…へえ、会計ってすぐ手ぇ出しちゃうタイプなんだ。こわ」 「君の声って耳障りなんだよねえ?せっかくなんだし、二度と喋れないようにしてあげようか?」 「ちょっと、やめてよ会計!ねえってば!」 テーブルの上にあった灰皿に手を伸ばしたとき、 手首を掴まれる。 茅でも、皐でもない。別の手。 ゆっくりと視線を向ければ、そこには生徒会書記もといよーへいくんがいた。 |