文明機器

正直、あのとき純たちが殴ってくれて悪い気はしなかった。
誰かが止めなければあいつらも調子に乗っていただろうし、もしあれ以上なにか言われてたら俺の方がブチ切れていたかもしれない。
だから、スッキリした。
こんなんだから俺、ダメなんだろうなーとは思うけど、こればかりはどうしようもない。性格的なものだか。

ユッキーに送られ、部屋へと戻ってきた俺は携帯電話を耳に押し当て、ベッドでごろごろしていた。
耳に当てた受話器から聞こえてくるのは、大好きな声。


『荷物は大丈夫だ。部屋にあるの、勝手に使っておいていいから。本も好きなの読んでいいぞ』

「本って、全部参考書じゃん」

『ついでに勉強しておけ』


別れて数時間しか経ってないけど、我慢できなくて俺はマコちゃんに電話を掛けていた。
マコちゃんもマコちゃんで同じ事考えてくれていたようで、俺の電話の相手をしてくれる。
こんな鬱陶しいタイミングで掛けられてうざがられるってのはわかってたけれど、それでもいつもの調子を崩さないマコちゃんが大好き。


「マコちゃんいないならやる気でないしー」

『俺がいてもやる気でないくせに』

「さすがマコちゃん、俺のこと知りつくしてんね」


どうでもいいこと、しょうもないことを話して笑い合う。
本当はこんな話をしてる場合ではない。
わかっていたけど、やっぱりマコちゃんの笑い声は俺にとって大きな力になる。

暫く話し込んで、俺達は通話を終了させた。
今日から二週間、マコちゃんがいない。
寂しくないといえば嘘になる。
だけど、せめてマコちゃんに心配かけないように、笑顔でマコちゃんを迎えることだけはできるように。
そのまま俺はベッドに沈み、掛け布団に顔を埋める。
マコちゃんの匂い。
あー、やばい。なんかこう、マコちゃんに包まれてる感じがしてすげえ癒される。
これで、二週間乗り切れそうだな。
なんて思いながら、マコちゃんの布団に包まれながら俺は瞼を閉じる。
そのまま、俺は深い眠りへと落ちた。


mokuji
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