会計は思案する

長かった。
無駄に長かった。
いや、本人からしてみれば簡潔にさくさく進行したつもりなのだろうし実際さくさく進行したのだが進行し過ぎたあまりに当初の『簡単に』という単語がどっか飛んでいってしまってた。
と、まあそんなわけであまりの眠気に勝てず爆睡してしまい気付いたときには生徒会室には皆いなくなっていた。

誰か一人くらい起こしてくれたっていいのに。
なんてぶーたれる一人きりの生徒会室内。
遠くから体育やってる生徒の声が聞こえてきて、つられて開きっぱなしになった窓から外を見た。

青い空に緑の木々。
山中に出来たこの学園は他の学校に通うやつらからは監獄と呼ばれていた。
施設や設備は完璧でかなり整ったこの全寮制男子校。
全国でも偏差値が高いことで有名で、その反面よくない噂がゴロゴロしていた。
賄賂出せば簡単に裏口入学出来るが、一度入学したら卒業まで脱け出せない。
外出は絶対禁物。
親の参観も許されない。
その代わり、絶対偏差値は上がる。
らしい。

ほんと、馬鹿馬鹿しい。
うちの学校の偏差値が高いのは簡単にカンペが手に入ってカンニング行為が横行されてるからだし、周りからはお堅いやつばかりが入ってると思われているが実際は勉強なんてどうでもよくて楽に高卒資格が欲しい馬鹿なやつらが大体だ。
それに、俺もその内の一人だ。
とにかくどこか違う高校へ逃げたくて、俺はこの学園へとやってきた。
馬鹿でも金と行動範囲の制限さえすれば絶対外部からの接触から守ってくれるこの学園へと。

しかし、中には俺とは真逆みたいなやつもいる。
黒い噂があるにも関わらず、偏差値の数字を信じてやってきたやつも。
マコちゃんも、その内の一人なのかもしれない。
だからこそ、自ら風紀委員長に立候補し、根本から歪んだこの学園の内部を叩き直そうとしている。
ほんと、お節介だなあと思う。
周り無視して自分一人確実に知恵身に付けていけばいいものを、わざわざ周りに手を差し伸べようとするのだから。

ひんやりとした窓ガラスにそっと触れ、その冷たさに自分の熱を感じた。
まあ、そんなマコちゃんを少しでも手助けしたくて生徒会に入った俺も俺なんだろうけど。
マコちゃん曰く悪の根元らしい駄目生徒代表連中を内部から変えていく。
そんな大層なこと俺に出来るのか今でも疑問だが、少しはマコちゃんの力になれるなら俺も慣れない電卓を叩いてやろう。


生徒会会計の椅子に自ら望んで腰を下ろした十七歳の春。
少しだけ、今まで億劫だった学園生活に光が射したような気がした。

mokuji
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