すきの基準 本当はもっと色々話したかったが、これからマコちゃんは用事があるようだ。 恐らく、教師たちがやってくるのだろう。 マコちゃんは何も言わなかったが、なんとなく聞かれたくないという雰囲気を感じた俺は渋々その場で別れた。 「あの、仙道さん」 純と落ち合い、そのまま病院をあとにしたとき。 どこか落ち着かない様子の純に呼ばれる。 「んー?」 「仙道さんって、あの、風紀のやつと…その…つっ、つ、付き合ってんですか?」 なんでそこで吃るのだろうか。 かなり恐る恐る、といった感じで尋ねてくる純に俺は歩きながら少し考え込む。 「……さあ?どうなんだろ」 「そんないい加減な」 「でも、好きだよ」 それだけは言えた。 マコちゃんが困ってたら助けたいし、マコちゃんが幸せになってくれたら嬉しいし。 真顔で答えれば、「え」と純が足を止める。 自分から聞いておいてその反応はなんなのだろうか。 俺は立ち止まった純を振り返る。 「純も、好き」 いつもごめんね、と小さく付け足せば、少しだけ意外そうな顔をした純が顔を上げ、俺を見詰めた。 「……仙道さん?」 どうしてそんな顔をするのだろうか。 悲しそうな目をして俺を見上げてくる純に、俺は口元を緩め、微笑んだ。 「そろそろ帰ろっか」 これ以上遅くなったら締め出されるかもしれない。 まあ、そうなったら校門なり飛び越えればいいのだろうが、今はあまり波風を立てたくなかった。 俺は、純の視線から逃げるように病院の前に停めてあったバイクへと足を進めた。 |