嵐の前の静けさ 真っ直ぐに見詰められたら、まるで全部見透かされてしまいそうで。 いっその事、マコちゃんにすべて打ち明けることが出来たら。 息の詰まるような居心地の悪さにそんな迷いすら覚えたが、実際、全てを打ち明けたとしてマコちゃんはどう思うのか。 マコちゃんは、不良が嫌いだ。 だから、風紀委員になったと聞いた。 だとしたら、俺の全部を知ったら確実にマコちゃんは俺を嫌いになる。 それだけは、嫌だった。 迷って、迷って、結局、なにも言えなかった。 固まり、動けなくなる俺に少しだけ悲しそうな顔をしたマコちゃんは柔らかく微笑む。 そして、頭を撫でていた指先が離れた。 「……っ、ぁ」 「俺に言えないなら言わなくてもいい。だけど、いつも言ってるだろ。一人で抱え込むなと」 ゆっくりと立ち上がったマコちゃん。 伸びてきた手に肩を抱かれ、そのまま優しく抱き締められた。 マコちゃんの匂いがして、僅かに緊張が緩む。 「マコちゃ…」 「頼むから、あまり無理をするな。苦しそうな京を見ていると、俺まで苦しくなる」 「……マコちゃん」 ごめんね、という言葉は声にならなかった。 首筋に顔を埋めるマコちゃんに、おずおずと手を伸ばした俺はそのままマコちゃんの背中を擦った。 やっぱり、言えない。 マコちゃんを手放したくない。 マコちゃんがいたら、一時的だが全てを忘れることが出来る。 こうしている時間が一番安らぐ。 どんな屈辱を受けようが、マコちゃんがいてくれれば、それだけで。 「……京」 無言でマコちゃんを抱き締め返す俺に、ゆっくりと顔を上げたマコちゃんは擦り寄る俺の頭を撫で、そして、割れ物にでも触るかのように優しい手付きで俺を離した。 「とにかく、今日は休んでおけ」 そして、そのままベッドに寝かしつけようとしてくるマコちゃん。 されるがまま、ベッドの上に仰向けに寝転んだ俺は目線だけマコちゃんに向ける。 「誰が来ても開けるんじゃないぞ」 「…わかった」 言いながら、布団を掛けてくるマコちゃんになんだか自分がどうしようもない子供になったような気分にならずにはいられない。 そして、布団を整え終えたマコちゃんは俺に背中を向ける。 「マコちゃん、どこに行くの?」 咄嗟に、そう問い掛けた。 マコちゃんは足を止め、こちらを振り返る。 笑みを浮かべているものの、なんとなく、なんとなく嫌なものを感じた。 「すぐ戻ってくる」 「早く、戻ってきてね」 「ああ」と、頷き、そのままマコちゃんは扉から部屋を出ていった。 外側から掛けられるロック。 なんとなく、胸がざわつく。 マコちゃんが不必要なまでににこにこしているときは、大抵なにかを隠しているときだと俺は知っていた。 だけど、俺は、マコちゃんに会えたことで緊張が緩んでしまったようだ。 しばらくもしない内に、糸が切れたように俺はそのまま深い眠りへと落ちる。 |