犬科のなにか

微睡んだ意識の中。
目の前の天井をぼんやりと見上げる。
畳独特の匂いが鼻についた。


「ん、ぅ……っ」


気付いたら押し倒されていて、上に馬乗りになった笹山に上半身を抱き締められたと思ったら腰に回された手が服の中に入ってくる。
背筋をなぞるような優しい手付きで裾を捲り上げられ、こそばゆさに背筋を伸ばした。
肩口に顔を埋めていた笹山の唇が首筋に押し当てられる。


「なに、やってんの」

「嫌ですか?」

「…なんか犬みたい」

「犬ですか。俺、犬好きなんですよ」


なんとなく妙に会話が噛み合わないのはお互いに酒が入ってるからだろうか。
首筋にちゅ、と音を立て皮膚を吸われればぴりっとした痛みが走りびくんと体が跳ねる。


「原田さんは犬は嫌いですか?」


唇が離れたと思えば筋をなぞるようにれろりと舌を這わされ、俺はやつの腕の中で小さく身動ぎをする。
甘く優しい声。
視線を首に顔を埋める笹山に向ければ、こちらを見上げる笹山と目があった。


「噛み付く犬は、きらい」


そう乱れる息を整えるように吐き出し呟けば、笹山は声を上げずに笑う。


「畏まりました」

mokuji
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