悪酔サティスファクション

あれからどれくらい経っただろうか。
かなり時間が経ったような気がするが実際はそんなに経ってないかもしれない。
つまりわからない。


「原田さん、原田さん」


あまりの疲労感に時間感覚を失い、朦朧としているところに心配そうな笹山の声が頭上から降ってくる。
どうやら、空いた部屋を借りて寝かされていたようだ。
うっすらと目を開けば、申し訳なさそうな顔をした笹山がいた。


「具合はどうですか?」

「だいじょうぶじゃない」

「すみません」


なんでお前が謝るんだという言葉は喉につっかかり、代わりに俺は重い上半身を起こした。
ずるりと額からなにかが落ち、拾い上げてみればそれは冷やしたお絞りだった。
もしかしたら笹山が用意してくれたのかもしれない。


「原田さん、休んで下さい」

「…他の皆は?」

「隣で飲み会続けてますよ」

「ふうん…」


言いながら、ふらふらと立ち上がろうとしたら「原田さん」と笹山に呼ばれる。
構わず外へ出ようとしたとき、ぐらりと足元が揺れ背後の笹山に倒れ込んでしまう。
間一髪、咄嗟に伸ばされた笹山の手に抱き止められたらしい。


「ありがと」

「まだ戻っちゃダメですよ」

「なんでだよ」

「また、お酒飲むじゃないですか」

「そのための飲み会じゃねーのかよ」

「原田さんは酒癖が悪いのでこれで我慢してください」


『これ』と言って水の入ったグラスを差し出してくる笹山。
本当は水は水でもアルコールがたんまり入った水が欲しかったのだが、喉の渇きは収まらない。


「飲ませろ」


ぼんやりとした頭のまま、そう笹山の顔を見上げればこちらを見下ろしていた笹山は困ったように眉を寄せ、小さく微笑む。


「構いませんよ」

mokuji
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