喧嘩する程仲が[??] 「阿奈、邪魔しないでよ。あと、原田さんに絡まないで」 「絡んでねえよ。こいつの方から絡んできたんだっての」 「なら原田さんをこっちに渡せよ。その人、酒癖悪いからなにしでかすかわからないし」 「酒癖悪いのはお前も一緒だろ」 笑う四川に笹山のコメカミがぴくぴくと反応した。 険悪な雰囲気の二人に顔を青くした店長は「原田、こっちにこい」と手招きしてくる。 俺としてもこの場から離れたかったが、腰を抱える四川に抱き締められ逃げられない。 「酔っ払いに酔っ払いを任せたら大体ろくなこと起きねえんだよな。お前みたいに顔に出さないむっつり野郎なら、尚更」 「……俺は酔ってないんだけど」 「酔っ払ってるやつほどそう言うって知ってる?」 その四川の一言に、ビキリと音を立て笹山の額に青筋が浮かんだ。 やばい、なんか知らないけどやばい。 二人の間に挟まれ、どうしたらいいのかわからず不安になった俺は笹山と四川の顔を交互に見る。 二人の視界に既に俺は入っていない。 「原田さん」 と、思いきや笹山に名前を呼ばれた。 恐る恐る顔を上げたとき、ぐいっと腕を引っ張られる。 「帰りましょう。阿奈といたらなにされるかわかりませんし」 「うるせえな、なにするかわかんねーのはお互い様だろうが!」 「一緒にしないでくれる?」 「ああ、そうだな。前からお前の方が酷かったもんなあ。遊び方も性格も物事の後始末の仕方も!」 「なんだって?」 「おい、二人とも止めろ。そんなんだから最近の若者はキレやすいって言われるんだぞ!紀平、おいお前もなにか……って寝るな!起きろ!」 慌てて仲裁に入る店長はテーブルの上で突っ伏し、酒瓶を枕代わりに抱き締めくーくー寝息立てる紀平さんに「なんでこんなときだけ使えないんだ貴様は!」と嘆く。 店長以外、まともに二人の仲裁に入ろうとする人間はいない。 それどころか「また始まった」と言わんばかりに慣れた様子でにやにや傍観する者や構わず食事を続ける者、我関せずを貫き通す者ばかりで。 そんな中、どうすればいいのかわからずあたふたと目を回していた俺は自分の体の異変に気付く。 あ……吐きそう。 |