味方選びは慎重に 「なに、お前、言って」 突然の笹山の宣言につい片言になってしまう。 しかし、笹山は俺の方を見てくれない。 帰るって、なんで俺が。 アルコール漬けになった頭は訳もわからなかったただ嫌な予感だけはしっかりした。 「これ以上酒を飲ませたら危なそうですし、それにもう夜遅いですから」 「遅いってまだ日付変わったばかりじゃないか」 「十分遅いですよ」 「なら俺が送ろう。車なら停めてある」 「店長さっき一杯飲んでましたよね」 「うぐっ」 「店長たちはゆっくり飲んでて下さい。原田さんは責任もって俺が送り届けますので」 言葉に詰まる店長とは対照的ににこりと微笑む笹山はいつもと変わらない様子で。 なんかよくわからないが、俺のいないところで話が進んでいる。 「じゃあ、お先に失礼します」 言いながら、笹山に肩を抱かれ強引に歩かされそうになり、咄嗟に俺は近くの柱にしがみついた。 「やだ、まだ帰らねえ」 「駄々っ子ですか」 ぐ、と肩を掴まれ俺は「きゃー!笹山が襲ってくる!」と声を上げれば笹山は「人聞き悪いですよ」と宥めるように俺の背中を擦る。 相変わらず優しい手付きにうっかりうとうとしかけた俺はハッとし、慌てて笹山から逃げるようにそばにいた適当なやつを盾に隠れた。 「おい、服掴むんじゃねえよ。バカ」 すると、前方から聞き覚えのある声。 顔を上げれば、面倒臭そうな四川が吐き捨てる。 どうやら咄嗟に隠れた影は四川だったらしい。 「お前でいいや、笹山を追い払え!」 「それが人に頼むあれかよ、出直してこい」 どうやら俺の言い方が気に入らなかったようだ。 首根っこを掴まれ、無理矢理引き剥がされそうになり俺は慌てて四川の上半身にしがみついた。 「わかった、謝るから、謝るから助けて。助けてください四川様」 「俺にメリットは」 「後でオレンジジュース飲ませてやる」 「いらねえよ、バカ」 吐き捨てるような乱暴な物言いとは裏腹に愉快そうに笑う四川は俺を抱き寄せ、笹山に向かい合う。 「ってことらしいから、帰るんなら一人寂しく帰れよ」 「ほんっとお前って男にはモテねえよな」とせせら笑う四川に笹山の眉が僅かに吊り上がり、一瞬四川と笹山を囲む周囲の空気が凍り付いた。 |