アル中のアルコール浸し一丁 「原田、お前、周りのやつらがいる前でこんな…って痛い痛い痛い痛い!」 ぎちぎちと首筋に歯を食い込ませれば、蒼白になった店長に慌てて引き剥がされる。 「貴様、俺の体に傷をつけるとはなかなかやるな…!」 「店長、血めっちゃ出てますよ」 「うおっ!」 「なんてことだ!」と慌てて手拭いを首筋に押し当て応急処置を図る店長に解放され、店長から離れた俺は抱えていたジョッキに口をつけたとき、横から伸びてきた手にジョッキを取り上げられる。 「あ」とジョッキを目で追えば、そこには困ったような顔をした笹山が立っていた。 「原田さん、飲み過ぎです。それに、仲裁に入った店長に怪我を負わせるのはよくないですよ」 「ビール返せよ」 「ダメです。これ以上は体壊してしまいますよ」 「…うぅ」 仁王立ちの笹山に諭され、なにか言い返したかったがあやふやになった頭ではなにも考えられず俺はむっとする。 手を伸ばし、ジョッキを取り返そうとすれば高く笹山は持ち上げ俺の手の届かないようにした。 くそ、無駄にでかい。 「笹山の鬼、ちょっとくらいいいだろ。ばか」 「俺は原田さんのためを思って……って、ちょ、待っ」 笹山が言い終わる前に、やつの服を引っ張るように足元がぐらりと揺れ、そのまま笹山にしがみついてしまう。 そして、慌てて片手で俺を支えようとした笹山の気は確かに一瞬手元から逸れていた。 だから、間に合わなかったのだろう。 体とともに大きく傾いたジョッキの中からビールが零れ、丁度その下にいた俺の頭からそれは降ってきた。 「あっ、す、すみません!大丈夫ですかっ?」 髪から滴り落ち肩口や首筋へと伝い落ちるひんやりとした液体。 瞬間、周囲のアルコール臭は爆発的に濃厚になり、噎せ返りそうになるくらいのその匂いにうっとりと頬を綻ばせた俺はぎょっとする笹山の前、ぽたぽたと黄色い滴を垂らす指先に舌を這わせ皮膚を濡らすその液体をぺろりと嘗めた。 「……うめえ」 指先から根本までねぶるように舌を這わせ、そうぽつりと呟けば、手拭いを手にした笹山はそのまま床に手拭いを落とす。 |