その男、酒乱につき。 「っん、ぅ゙うッ」 目を見開いた四川はなにをされているか気付いたようだ。 顔色を変え、慌てて俺を剥がそうとしてくるやつに構わず口の中のアルコールを四川の咥内へ注ぎ込むように深く唇を押し付ければやつの喉仏がごくりと上下する。 受け止めきれず、唇から溢れた液体が顎から首筋へと滴り落ちた。 あっという間に口の中は空っぽになる。 呆然と放心したように俺を見詰めてくるやつに内心ほくそ笑みながら顔を離そうとしたときだ。 後頭部に回された四川の手に頭を掴まれ、唇を貪られる。 「ふっ、んん……っ」 唇を吸われ、咥内を舌で荒らされればアルコールが浸透した全身から力が抜けそうになる。 四川は酒が嫌いだとか言っていたから嫌がると思っていたので、まさかキスされるとは思ってなくて。 上顎を乱暴になぞられれば脳髄が蕩けそうになり既に酒のせいであやふやになりかけていた俺の意識は四川の熱に当てられどっかに飛んでいきそうになる。 あ、やば。 舌を絡め取られ、濃厚な酒気を孕んだ吐息に目を細めた矢先だった。 「なにをしている貴様らぁあっ!!!」 無理矢理首根っこを掴まれ引き離された。 「店長、なんですかもう。俺は、四川と、話してたのに」 「わかった、わかった、わかったからもうお前は飲むな!飲んでもあんな粗暴なやつではなく俺に絡め!優しくしてやる!」 肩を掴み鬼のような形相でがくがくと揺さぶってくる店長に目が回りそうになる俺。 少し離れた場所から「店長、言っている意味がわかりません」と司は適切に突っ込んでくる。 しかし店長は止まらない。 「ほら、ジョッキを渡せ」 「嫌です」 「原田、我が儘をいうな」 「やです」 「原田」 「……」 「原田あぁ…」 ぎゅっとジョッキを抱え、店長からぷいっと顔を逸らせば店長は泣きそうな声を出す。 「つーか、粗暴なやつってなんだよ。そいつからけしかけてきたんだっての!この酔っ払い!」 そして俺が店長に捕まっていることをいいことに言いたい放題言ってくる四川に「なんだとやんのかてめー」ともそもそ動けば、「おい」と慌てた店長に抱き締めるように全身を拘束された。 「お前たちはあれだ、酒は飲んでも呑まれるなという言葉を知らないのか。大体、酒は量ではなく味をだな…」 目の前で形のいい店長の唇が動き、心地のよい低音が鼓膜に流れる。 内容は頭に入ってこないが。 暖かい。 思いながら、なにかごちゃごちゃ喋っている店長を見上げながら俺はそのまま店長の胸元に擦り寄る。 「味わいを楽しむというのが紳士のたしなみであり…◎※%#£!!!」 その背後に手を回しぎゅっと抱き着きながら目の前の首筋にかぷりと噛み付けば、演説をしていた店長はもはや言葉にならない悲鳴をあげた。 うるさい。 |