童貞vs変態

「どうって、どうから見てもちん……」


唐突に投げ掛けられた理解不能なセクハラ染みた問い掛けに戸惑いながらも答えたときだ。
「違う」と店長は俺の言葉を遮る。


「俺はどう思うかを聞いたんだ。ちんこの形をしてることくらい見りゃわかる」


まあ、そうですよね。
だってどっからどう見てもちんこだしと納得しそうになった俺だがそれと同時に益々店長がなにを言いたいのかわからなくなってきた。
混乱し、口ごもる俺に小さく息を吐いた店長は「言い方を変えるか」と呟き、そしてそのまま俺を見据える。


「そうだな……これを客に勧めるとき原田、お前はなんと言って勧める?」

「え?」


そして再度質問。
先ほどよりもいくらかフランクになったが、どちらにせよ俺にとっては高度な質問だった。


「勧めるって、俺、使ったことないし……」

「見た目だけで長所を考えろ。そして自分が使っているところをイメージしろ」


またそんな無茶を。
使うって俺まんこないんだけど……ってことはあれか、ケツの穴で想像しろってことか。
無理だろ普通に!


「なんだ、お前は実際これを捩じ込まれなきゃわからないのか?」

「ち、違います……けど」

「ならさっさと言え。生憎俺も暇じゃない」


どこまでも偉そうなやつだな。
感じ悪いな、なんて思いながらも渋々目の前のディルドを使っている妄想をしてみる。
アナルなんて弄ったことのない俺からしてみたらこのディルドがどのくらいのものか想像つかないが、とにかく褒めてみればいいのだろう。

脳内で自分が女になったという設定でディルドを突っ込まれる妄想をする。
太さは平均より少し大きめだがカリは大きく体長もある。
そしてリアルなフォルムには造物独特の無数のイボ。
入れようとしたらカリが引っ掛かって痛そうだが、ある程度慣らしている人間ならそれが気持ちよく感じるかもしれない。
脳内で自分を押さえ付け、太股を鷲掴んで無理矢理開脚させる。
下着を脱がし露出した肛門に先端を宛がうがまともに異物を受け付けたことのない排出器官はそれを受け入れようとせず締まったままで俺はそのまま強引にディルドを捩じ込……ちょっとまじで興奮してきたから自重しておく。これ以上は洒落にならない。男として。


「えっと、その、……長いです」


というわけで気を取り直して当たり障りのない答えを口にすれば頬杖をつく店長は「それから」と淡々と促してくる。

え?それから?
一個じゃないのかよ、と今さら恥ずかしくなる俺はもじもじしながら店長から目を逸らした。


「……っと、なんかそのイボイボでグリグリされたら、その、き……気持ちいいかもしれません」

「それでそれで?」


まだやれというのか。
じわじわ顔が赤くなるのを感じ、俯く俺を見兼ねたようだ。
「なんなら触ってもいいぞ」と笑う店長は言いながらディルドの亀頭を俺の頬にぐにぐに押し付けてくる。
硬めの、ゴムの感触。
しかしゴム独特の臭いはない。
押し付けられるそれにまじでちんこでつつかれてるみたいでぞくりと身震いをした俺は慌てて店長の手からそれを奪い、根本から切り落とされたような形のそれを観察してみる。
ご丁寧に玉袋まで造られたそれの底には吸盤が付いており、取り外しが出来るようになっていた。
風呂場とかタイルの壁にくっ付けるためだろう。
よく考えてるな、なんて思いながら俺はそのフォルムを指でなぞる。
かなり奇異な造形をしたディルドだがそのイボイボは触り心地がいい。むにむにと両手で全体を揉んで手遊びをしていると僅かに店長が眉を寄せた。
さっさと答えろ、ということだろう。
慌ててディルドを机に置く。


「……あの、壁につけれるので好きな位置に設置し一人でも楽しむことができると思います」


そしてそう感じたことを素直に答えれば店長は満足そうに頷き、そして薄く笑んだ。


「因みにお前はオナニーでディルドを使ったことあるのか」


こいつ、堂々とセクハラしてきやがった……!

mokuji
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