いつも通り失われた拒否権

今日一日のバイトを終え、店長から一日分の給料をもらった俺は私服に着替えるために更衣室に来ていた。
仕事内容にプラスして厄介な仕事仲間たちの相手をするのはなかなか重労働のように思える。
ぐったりしながら私物を纏めていると、携帯電話が着信を受けていることに気付いた。
残念ながら誰からだろうか、と考えるほどの人数は登録されていないこの携帯はほぼ翔太からの受信専用になっているので今回もどうせ翔太からだろう。

思いながら携帯を開いた俺は顔を引きつらせた。


「げ……」


着信履歴には翔太から何十件もの大量の留守電が入っている。
またあいつバカみたいに電話しやがって。
暇なのか最早嫌がらせ染みた着信履歴に今さら青ざめたりはしない。
バイト中は携帯を弄れないので休憩時間以外触れないのだがどうやらそれがまた翔太の心配性というか暇人根性に火をつけてしまったようだ。

後が煩いし、連絡取っておくか。
思いながら翔太に折り返し電話をしようとしたときだった。


無人だった更衣室の扉が勢いよく開かれる。
何事かと目を向ければ開いた扉からは怒ったような顔の四川がいて、つい反射で「ひっ」と携帯を落としそうになった。


「おい、なに勝手に帰ろうとしてんだよ」


言いながら詰め寄ってくる四川にびくっとしながらも身構えた俺は肩を掴んでくる四川を振り払いながら「なんだよ」と相手を睨めば、四川は「歓迎会」と口を動かした。


「歓迎会するから店長たちにお前呼んでこいって言われたんだよ」

「って、誰の」

「お前の」


なにそれ初耳なんだけど。


「いや、俺いまからかえ…っうわ、ちょ、引っ張んなってば!」

「いいからさっさと来い。あの人ら臍曲げたら面倒臭ぇんだよ」


「それに、連れてこれたら店長に金貰えるしな」と笑う四川に引き摺られ、落としそうになった携帯を慌てて服にしまう。
俺に拒否権はないのか!
そう言う隙も与えられずあっという間に俺は四川に連行された。


飲んだら乗るなハメるな誘うな襲うな

mokuji
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