いい子わるい子

「笹山っ!きっ、貴様!仮にも上司の俺を殴るとはどういうことだ!ちょっと頭へこんだぞ俺のこの完全無欠唯一無二な造形美が崩れてくれたらどうする!」

「店長、俺は原田さんの怪我の手当てをするからと言うので手伝ったんですよ。元より店長の下世話を手伝うわけではありませんので。それにいくらなんでもそれは言い過ぎです」


俺の下腹部から手を離し、取り出したティッシュで精液の処理をする笹山は呆れながらも冷静に突っ込む。
そんな笹山に対し「失望したぞ笹山…!」とわなわな震える店長に「店長が言わないで下さい!」と言い返す笹山。
そして、気を取り直すようにごほんと咳払いをし、店長から俺を離すよう軽く抱き寄せられた。


「とにかく、これ以上は見過ごすわけにはいけません」


そう強い口調で店長に告げる笹山に、頭を擦っていた店長は忌々しそうに舌打ちをする。


「糞、どうしてこんなに優しいいい子に育ってしまったんだ。俺の教育の賜物か…!」


やりきれないといった顔でそんなことを呟く店長に笹山は「突っ込みませんからね」と続けた。
そんな冷たい笹山の態度が気に入らなかったようだ。
むっと顔をしかめた店長はそのままぷいっとそっぽ向く。


「ふん、もういい!勝手にしろ!今度から笹山とは遊ばんからな!」


小学生か。
というか遊んでるのか。

ぷりぷりしながら休憩室を出ていく店長。
店長がいなくなった後扉が閉まり、やっと出ていった…と内心ほっと安堵したときだった。
ガチャッと扉が開き、その僅かな隙間からこちらを覗いてる店長がぴゃっとなにかを投げてくる。
いきなり飛んできたそのチューブのようなものを受けとれば、再びぴゃっと扉に引っ込んだ店長。
投げ入れてきたそれは切れ痔用の軟膏だった。


「……」


直接渡してくれたらいいのに。
思いながら俺はそれをしまう。

mokuji
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