話が通じない相手ほど涙に弱い

「っあ、やぁ、ごめんなさ、ぁ、──っああぁ!」


わけがわからなくなって、やめてくださいって懇願しようとした矢先我慢という我慢に慣れていない俺の性器から勢いよく精液が溢れる。
飛び散ったそれが笹山の腹部にどろりとかかるのを見て死にたくなった。
申し訳なくて慌てて拭いたいのに、射精の疲労感から手足から力が抜けだらりと項垂れる俺は息絶え絶えで、そのまま体勢を保つことも儘ならずぐったりと笹山にもたれ掛かってしまう。


「っ原田さ……」

「くくっ、見たか笹山。こいつは人に傷の手当てをしてもらっている最中に射精するようなやつだぞ」


「だらしがない下半身だな」と笑う店長は肛門から指を引き抜き、拍子に中を擦られびくんと腰が跳ねた。
言いたい放題言いやがって。
最後の力を振り絞り、背中をさすってくれる笹山にしがみついたまま背後を振り返るように後ろに立つ店長を睨めば笑いながらこちらを見下ろしていた店長は「な、なんだその目は…」と狼狽える。
そして、弱ったように小さく息を吐いた。


「わかった、俺が悪かったから泣くな。もう痛いことはしないから。ほら、泣くな」


言いながら、観念した店長は乱雑にわしわしと頭を撫でてくる。
あれ、そっち今人のケツ弄ってた方じゃないか、おいふざけんな。
思いながら、泣いてないです、と言おうとして自分の声がちょっと涙が混じってることに気付いた。
そして、上から撫でてくる店長のせいで目のやり場に困った俺はそのまま視線を下ろし、固まる。


「てんちょ…」

「ん?なんだ?」

「なんで、チャック」


そう恐る恐る尋ねれば、片手で器用にチャックを下ろしその中をまさぐっていた店長は「ああ」となんでもないように静かに頷く。


「今度は気持ちいいことをしてやろうかと…っぐふ!」


そして間髪入れずに笹山に丸めたエロ雑誌で頭を叩かれていた。

mokuji
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