諸悪の根源について

場所は変わって休憩室。
笹山にAV売り場から連れ出され店内を後にした俺は連れられるがまま休憩室にやってきた。


「大丈夫ですか?……って、聞くことじゃないですよね」


そして、俺をソファーに座らせた笹山は困り顔で俯く。
未だ動悸が止まらず火照った全身は感覚を取り戻しきれていない。
それを悟ったのだろう。


「すみません、もう少し俺が早く気付くことができれば原田さんがこんな目に遭わずに済んだのに」


そうしょげる笹山も笹山でどうすればいいのかわからないのだろう。
ただひたすら自責する笹山にこちらまで動揺する。


「いや、別に笹山のせいじゃ…」

「まさか店長が砂糖と媚薬をすり替えてるとは思ってもなくて」


ないだろ。
そう言いかけて、さらりと笹山の口から出てきた驚愕の事実に「え?」と間抜けな声を上げる俺。


「ちょ、なに、媚薬って」

「実はその、店長が試作品の精度を確かめるために店員たちに秘密で調味料に媚薬を混入させていたようで……俺もさっき店長から聞いたばかりなんで詳しくはわかりませんが」


冷や汗をだらだら流す俺にそう相変わらず申し訳なさそうにする笹山の口から語られるそれらになんだかもう俺は目の前が真っ暗になった。
なにやってんだよあの睫毛野郎。
またあいつのせいかよふざけんなと憤怒を通り越してなんかもう泣きそうになる俺を他所に笹山は続ける。


「甘党の紀平さんのケーキには特別砂糖を入れてしまったのでもしかしたらと思って原田さんを探していたのですが、すみません。一歩遅かったようですね」


我がことのように泣きそうになる笹山に一歩どころか二歩三歩遅かったがな!なんて言えるはずもなくて、「ほんと、すみません。まさかこんなことになるとは思ってもなくて…」と項垂れたまま謝罪してくる笹山にこちらまで罪悪感を覚えてしまう。


「や、別にいいって、もう」


全然よくないがな。
そして流される俺も俺だ。
いやだって笹山みたいなこうしっかりした奴に謝られたら強く責められないというか、どうやら俺はしょんぼりした笹山に弱いらしい。


「原田さん…」


目を逸らし、どんな顔をしたらいいのかわからずどぎまぎする俺を見る笹山。
なんとなく気まずい沈黙が流れたときだった。

バンッと音を立て休憩室の扉が開く。


「原田、ここにいたのか」


入ってきたのはあまり見たくはないスーツ姿の中性的な美青年(顔だけ)もとい店長だった。

mokuji
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