前後左右の確認は忘れずに 先程から調子が可笑しい。 そわそわして落ち着かないのだ。 というかまあ、こんな空間にいて正常で居られる方が難しいのだろうが。 暗幕が張られたAVコーナー内部にて。 新作AVをプレイ別で並べていた俺はなんかもうやばかった。主に股間が。 衣服を乱れさせた女優の際どいアングルのパッケージに印刷された卑猥な言葉。 初めてエロ本見付けた思春期並みに興奮している自分が恥ずかしくなり、必死に萎えさせようとするが意識すればするほど股間に血液が集まり下腹部が苦しくなる。 「……」 ……まあ、ちょっとだけなら。 室内の暖房がやけに暑く感じ、熱に犯されたみたいにじんと逆上せた脳に浮かぶ思考。 それが正常ではないと頭のどこかで理解していながらもどっかネジが外れたみたいに歯止めが利かず、渇いた唇を舐める。 そしてそのままエプロンの下の下腹部に手を滑り込ませた俺は不自然に盛り上がったそこに指を這わせた。 「……んっ」 デニム越しに強く指で刺激し、そのもどかしい感触に小さく息を洩らした瞬間だった。 「なにやってんの?」 「っひぃ!」 突然の背後からの声にびくうっと跳び跳ねた俺は蒼白し、恐る恐る背後を振り返った。 そこには人良さそうな笑みを浮かべる紀平さんが立っているではないか。 多分、俺の顔は酷いことになっているに違いない。 例えば母親に自慰を見られた中学生みたいな。あれ、まんまだ。 |