優位に立ちたいお年頃 結論から言おう。 笹山のケーキはめちゃくちゃ美味しかった。 紀平さんから貰ったものは一口サイズだった上キスで頭パンクしかけたお陰でゆっくりと味わう暇がなかったが、改めてこうやって食べるとなかなか美味だった。 あまり糖分は摂らない主義だが、なかなかいける。 ケーキを食べながら笹山と他愛ない話をした。 笹山は19歳で俺よりひとつ下らしい。 あの四川とは高校の同級生だったと言う笹山の言葉に俺は二人が同級生だったことより四川の野郎が俺より一つ下だったことに驚いた。 あんな偉そうな態度を取るだけに同い年か一つ上かと思いきや年下かよふざけんな同じ高校だったら後輩じゃねえかあの野郎と憤慨しつつケーキを食べ進めていたときだった。 休憩室の扉が開き、見覚えのある茶髪頭が入ってくる。 「あれ、お前らしかいねえの?」 噂をすればなんとやら。 恐らく来たばかりであろう四川阿奈の姿に俺と笹山は「阿奈」「四川」と声を揃える。 そして、ケーキを頬張っている俺に気付いたようだ。 こちらを見た四川はにやりと口許を歪める。 「なんだお前、まだ辞めてなかったのかよ」 「お前が辞めんなつってきたんだろうが」 「そんなにあれが流出すんの嫌なのかよ、ただしゃぶってるだけだろ?」 なんでもないように続ける四川にぎょっとした俺は昨日のことを思いだし、青ざめる。 「食事中に嫌なもん思い出させんなっ!ばか!」 そう吠えれば、愉快そうに喉を鳴らして笑う四川はそのまま台所へと向かう。 「笹山、お前暇?」 「別に」 「俺夜まだ食ってなくてさー、ついでになんか作ってよ。精がつくようなので」 「にんにくでもかじっとけば」 「うっせぇ」 笹山の軽口に笑う四川。 言いながらも席を立った笹山は台所へと移動する。 誰にでも腰が低く敬語を使う笹山の四川に対する砕けた態度はやはり同級生相手ということか。 ちょっと寂しくなると同時に四川への恨み辛みがふつふつと募っていく。 「ん?」 そんな俺の視線に気付いているのか気付いていないのか、ふと台所を彷徨いていた四川はそこに置かれた調味料を手に取った。 そして「おい笹山、これなんだよ」と笹山を呼ぶ。 なんとなく様子が変わった四川が気になり台所に視線を向ければ、四川の手には愛らしい容器に入った謎の調味料が握られていた。 |