総攻撃チャンス

「なにを馬鹿なことを…!そんなことをして一人で生きていけると…!」


司はともかく、少なくとも兄にはダメージがあったようだ。
そのとき、狼狽える兄を見兼ねたらしい店長が「そのことですが」とここぞとばかりに口を開いた。


「金銭面ならご安心を。こいつにはまたうちで働いていただく予定なので」


「わりと給料についてだけは評判いいんですよ、うちの店は」と爽やか100%の営業スマイルを浮かべる店長。
給料だけって自分で言っちゃってるのはともかく、まさかフォローしてくれるとは思わず、それよりもまた雇用してくれるという店長に俺は目を輝かせた。


「店長…!」


ただのぼったくりセクハラ睫毛野郎と思っていたが、幾度も面接不採用を叩き出してきていた俺にとってその言葉は救いの手にも等しい。
しかし、問題はまだある。
俺の目から見てもわかるくらい、兄がアダルトグッズを販売しているということ自体嫌悪している。
そんな兄がすぐに承諾するはずがない。


「冗談じゃない!いくら給料がよかろうともあのような下劣な店で佳那汰を働かせるわけにはいかない。あんな乱れた場所で佳那汰の身になにかあってみろ、君は責任を取れるのか!」


何が何でも認めない。
そう全力で止めてくる兄に返す言葉が見付からず、まさかもう何か遭ってますなんてこと言えるわけもなくて。
また、俺は言い包められてしまうのか。
そう、歯を食い縛ったとき。

スパァンッと小気味の良い音を立て、襖が開かれる。というかどいつもこいつも扉の開け閉めの自己主張激しすぎるんだよ。と思いつつ振り返れば、そこにいたそいつの姿に俺は目を見開いた。


「お兄さん、もしかして僕のことをお忘れじゃありませんか?」


ド派手な赤い髪がやけに目立つそいつは、黒いフレームの眼鏡を指で軽く持ち上げ、柔和な笑みを浮かべた。


「僕も同じ職場に勤めさせていただいていますし、いつでも監視されていただいてます。そういうことであれば任せて下さい。自分もお兄さんと同じ気持ちです、なにかあれば速攻カナちゃんを、力づくでも辞めさせることを約束しましょう」


「それに、カナちゃんの面倒は僕が責任持って見させてもらいますから」と、きっぱりとした口調で言い切るそいつは俺の方を見てにこっと笑った。
そう、そいつは…。


「しょ、翔太…!」

「ちょっとカナちゃんその『うわ、こいつまじ忘れてたわ』みたいな顔はやめてくれないかな!」


好きなものは年齢制限のある美少女恋愛シュミレーションゲームとやたら肌色が多い美少女アニメ、趣味は裁縫でコスプレ衣装製作(なぜか女物ばかり)からプラモデル製作、フィギュア収集とその魔改造。半分二次元に行ってるんじゃないのかと思いたくなるような典型的なヲタク眼鏡野郎こと中谷翔太は…「いらないからそのモノローグ!不必要だから!そんな余計なところにサービス精神出すのやめてくれない?!悲しくなるから!!」…悪かった翔太、泣かないでくれ。

mokuji
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