絶対に笑ってはいけない原田家の家族会議

ずかずか広間へと入ってきた兄は四川を一瞥し、それからすかさず俺の元までやってきた。



「怪我の手当は終わったのか?」

「ん、一応…」


ついでに、服も着替えることができたがやはりこう、こう、いたたまれない。
俯きながら答えれば、兄は「そうか」と低く呟いた。

くるか……?そろそろくるか…………?
いつもならここの辺りで怒りを爆発させるはずだ、と身構える俺だが、兄の態度は予想していたよりも落ち着いていて。
寧ろ、いつもよりもどこか落ち込んでいるような気すらあって。

なんだ、なんでなにも言って来ないんだ、ビンタは?ビンタもしないのか?
嵐の前の静けさ的なものを感じ、青褪める俺。
そして、ようやく兄はゆっくりと口を開いた。


「大体の話は波瑠香から聞いた。…悪かった。あいつがちゃんとお前と仲良くするし虐めないと言うから任せていたのだけど、お兄ちゃんが目を離した隙にこんなことになるなんてな。

…………こんなんじゃお兄ちゃん失格だ」


「んぶっ」


予想だにしていなかった兄の弱気な態度に驚いたのは俺もだが、おい四川てめえ気持ちはわかるが笑うなてめえこっちまで噴き出しそうになるだろうが止めろ。


「お兄ちゃん、俺……」

「お前に不躾を働いたやつらは全員割れている。俺直々に処分を下すから安心していい。……だが、やっぱりお前をここに置いておくわけにはいかない」

「お兄ちゃん…!」


ということは、だ。もしかしてあれか、つまり、ようやく俺の独立を認めてくれるということか!
兄の口から出た言葉に、俺は目を輝かせる。


「俺、これからちゃんと自立するから、心配も掛けないように…」

「お兄ちゃんと一緒に家を出て、適当なマンションを借りよう」


そう、適当なマンションを借りてお兄ちゃんと一緒に…………はい?



はい?



「これからはずっと目を離さないよう厳重な設備とセキュリティでお前に快適安心な暮らしを用意してやるからな、佳那汰」



あれ、もしかして、これはまさかあれじゃないか?寧ろ悪化してないか…?

mokuji
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