食卓上の争い

「あぁー、生き返る。おい、おかわり」

「お前人んちで寛ぎすぎだ」

「随分なもてなし受けた後だからな、腹減ってんだよ」


というわけで、兄とハルカが退室してから部屋を移動した俺たちは食べ損ねた朝食を取るために広間へとやってきていた。
相変わらずな四川にはムカついたけど、巻き込んでしまったのは事実だがここは原田家の一員として俺が責任取って饗して…………っておいそれ俺の肉!客とか関係ないだろふざけんなこの野郎!


「そう言えば四川お前なんでここにいるんだ」


食卓の上、おかずの取り合いをしている俺たちを横目に茶菓子を手にした店長は尋ねる。


「知らねー、拉致られた」

「日頃の行いは大切だは」

「おい、どういう意味だよ」


そのまんまの意味だろ、と代わりに答えようとしたが伸びてきた箸にだし巻き卵を取られ、中断。
やつの皿から肉を取り上げ頬張った俺は、改めて食卓を囲むメンツに目を向けた。


「そういえば、店長たちはどうしてここに…?」


そして、バタバタしていて聞きそびれていた疑問を口にすれば、よくぞ聞いてくれたと言うかのように店長はふふんと胸を張る。


「せっかくの戦力を失うわけにはいかなかったからな、仕方なく来てやったというわけだ」


「嬉しいか?嬉しいだろ?泣いて喜ぶがいい!」と相変わらずなテンションの高さで身振り付きで答えてくれる店長。
ああ、なんかこの高笑いが懐かしい。


「店長、原田さんが連れ去られてからずっと心配してたぞ」


ようやく口を開いたかと思えば、店長とは対照的なローテンションの司は呟く。
店長が心配?
意外な言葉に驚き、店長に目を向ければ調子を狂わされた店長はばつが悪そうに顔をしかめた。


「お、おい…!貴様そういうことは…!」

「心配…してくれてたんすか?」

「…まぁな。って、いいだろもう、そういうことは!俺のことはいいんだよ!」


もしかして、照れているのだろうか。
必死になって話題を逸らそうとする店長に、少しだけ、少しだけだが、まあ、その…悪い気はしないわけで。
そっか、心配してくれたのか。なんて一人照れていると、こほんと咳払いをした店長はずびしとこちらを指差した。


「それよりも問題はお前だ、原田佳那汰」


突き付けられた長い指に「え?」と目を丸くした次の瞬間。
広間の襖が勢い良く開かれた。

やつだ、やつがご降臨なさった。

mokuji
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