逃亡者の末路

言われるがまま着替えてみた。
着替えてみたはいいけど……。


「なあ…」

「あ?」

「こっ、これってなんか余計にあれじゃないか?」

「あれってなんだよ」

「や、その…なんつーか……」


汚れてて気持ち悪いという理由で下着を脱ぎ捨てたはいいが、いざ着替えてみるとシャツは結構大きい。
大きいのはいいのだが、隠れるに越したことはないのだが、なんかこう、余計こうちらちらしないかとか微妙な長さの丈がミニスカートかなにかみたいで落ち着かないというか…………っていうかこれ裸ワイシャツじゃね?!


「こんな姿でお兄ちゃんの前に出られるかよぉお…!!」

「今更だろ」

「いっ、今更だけど!今更だからやなんだよ!」


泣きそうになりながら反論する。
こいつはいい。ちゃんと下履いてるし、上は裸だけどなんかこう鍛えた体見せびらかしたいイケメンみたいで様になってるし。くそ、言ってて腹が立ってきた。


「あーもう、ぴーぴーうるせえな。文句言うならそれ返せ!」


更に俺が噛み付くよりも先にブチ切れた四川は俺の着ていたワイシャツの裾を思いっきりたくし上げてきた。
「ぶわだっ!」と謎の奇声を上げた俺は、瞬間的にぽろりしそうになったそれを慌てて裾を引っ張ることによって間一髪隠すことに成功した。


「な…やめろってば!」

「じゃあ文句言うんじゃねえ!服ひん剥いて放り出すぞ!」


コイツの場合まじでやり兼ねないんですけども。
これ以上は危険だ。そう悟った俺は、「わかったよ」と渋々大人しくした。
ここにはなくても他を探せばあるかもしれない。
それを兄と鉢合わせになる前に探し出し、兄の前に顔を出せばいい。
それからのことはそれから考えよう。
そう無謀にも近い策を捻り出しながら、俺たちはそこを後にした。

勿論、逃亡者である俺にそんな余裕が与えられるはずもなかったのだけれど。


mokuji
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