執事服−スラック=戦利品 「おい、兄貴が帰ってきただけでサイレンってどうなんだよ」 「そういう事言ってる場合じゃねえよ、やばいって、早く帰らないとこんなところお兄ちゃんに見つかったら…」 「見つかったら……なんだよ」 「細切れにされて鶏の餌にされるぞ………!!」 というわけで、兄の無駄な行動力を身で知っている四川は渋々ながらも真剣に俺の服を探してくれることになった。 そこまではよかったのだが、どこを探しても女物しかないわけで。 「どうしよう……早くしねえと……」 時間ばかりが過ぎていく中、スピーカーから響いていた警報の音が一層激しさを増す。 警報の危機レベルを引き上げたようだ。 俺がいないことがバレた。 直感でそう理解した。 警報に思考回路を掻き回され、あわわわとテンパる俺。 それを眺めていた四川だったが、なにかを思いついたかのように面倒臭そうに舌打ちをした。 「っくそ、めんどくせえな…」 そう乱暴な仕草で髪を掻き毟ったときだ。 いきなり、四川は身に着けていた執事服に手を掛ける。 「はっ?ちょ、なに脱いで……っ、わぷ!」 投げ付けられたそれを慌てて手に取れば、それはたった今まで四川が着ていた白いシャツだった。 「なにもねえよりましだろ。…さっさと着替えろよ」 上半身裸になった四川は不機嫌そうに吐き捨てる。 まさかあの四川がわざわざ俺に手を貸してくれるとは思ってもいなくて、俺はまさに開いた口が塞がらない状態だった。 絶対「お前なんか全裸で十分だろ。今更恥ずかしがってんじゃねえよ」とか言って無理やり引っ張り出されると思っていたのに。 あの四川が、俺に。 「おい!さっさと着替えろよ、やべーんだろ!」 「わっ、わかった」 「あの………ありがとな」慌てて服を手にして物陰に引っ込んだ俺は、こっそりと頭を出して呟く。 聞こえているのかいないのか、相変わらず不機嫌そうな四川は「ふん」とだけ呟いた。 |