誰のための取引

「わかった、わかったから、ちょっと待て!」


咄嗟にやつの手首をぎゅっと掴んだ俺は必死にやつを制する。
そのお陰もあってか、「あ?」と訝しげな顔をした四川は渋々ながらも動きを止めてくれる。


「今度はなんだよ」

「と…っ取引をしよう…」

「はいい?」


うう、なんでこいつの声はこうも威圧感があるんだ、そんな声出したらビビると思ってんのかよ。こえーよ。


「だから、取引は取引だよ!」

「そんなくだらねえこと言ってる暇あるなら、可愛く鳴いてみせろよ」

「なッ……おい、聞けって!」


俺の意見も聞かず、下半身を弄る手に内股を撫でられ、四肢から力が抜けそうになった。
や、やばい、このままじゃまた流されてしまう…。


「あーくそ、ベタベタじゃねえか。きったねえな…」


なら触んなければいいんじゃないのかと叫びたい。


「ふ……風呂、入ってからでもいいだろ」


不機嫌そうな背後のやつを振り返った俺は、そう、振り絞るように喉奥から声を出す。


「あとでなんでもするから、頼む、今はやめてくれ…!」


mokuji
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