ふりだしに戻る

「っあー、クソッ!」


気持ちも落ち着いてきて、どっかに着れそうな服ないか部屋の中を探していると苛ついたように突然四川が吠える。
心臓に悪いのでせめて大声出す前に合図を出すくらいしてくれないだろうか。いや別にビビってはないけどな?ほら、心臓に悪いし。いやだからビビってねーよ?


「こ、今度はなんだよ!」

「…腹減った」

「はい?」

「腹が減ったって言ってんだよ」


いつもに増して不機嫌な四川は、呟く。
どうやら先程からやたらイライラしてるのも空腹のせいなのかもしれない。
原因がわかっただけただ単に俺のせいだけではないと安心したが、問題はここからだ。


「腹減ったって、ずっと食ってないのかよ。…ってか、大体なんでお前が俺んちいるんだよ!」

「知らねえよ、こっちが聞きてえから」


「気がついたらあの眼鏡と一緒に地下に転がされていた」と面白くなさそうに続ける四川。
あの眼鏡と言われ、俺はさっきまで一緒にいた翔太のことを思い出す。


「もしかして、翔太か?転がされてたってどういうことだよ」


不穏なものを感じ、つい俺は四川に詰め寄っていた。


「あぁ?そのまんまだよ、昨日の夜引っ張って来られてからなんも食ってねー」

「いやお前の腹じゃなくて、連れて来られたって」

「知らねーよ。よく覚えてねえし。つうか、お前のほうが詳しいんじゃねえの?」


皮肉たっぷりに返してくる四川にカチンと来たが、今の俺には四川と取っ組み合いの喧嘩をするほどの元気は残っていない。

誰かの思惑で四川がここに連れて来られたということか。
普通に考えて強烈的なまでの心当たりがある人間が一人いるのだが、敢えて俺は目を瞑ることにした。俺も早死したくない。


「取り敢えず、ちょっと待ってろ。すぐに飯用意するから、服、着替えないと…」


どろどろでぐっちゃぐちゃになった服は正直いい気持ちはしない。できることなら今すぐ風呂にダイブしたいところだけど、そこまでの間を上手くやり過ごすためにはやはり服を着替える必要があるわけで。

運良く衣装部屋へと入り込んだお陰、なんとか服が見つかりそうだ。と思ったがハルカのばっかじゃねーか。流石に妹の服を着るのは忍びない。というか兄としての立場をこれ以上崩したくない。あるかどうかすら怪しいが。

もうこの際ハルカの奴隷用でもいいからないだろうかとクローゼットに頭から突っ込んで探している時、いきなり腰を掴まれる。


「っおい、邪魔すんなよ!」


徐に服を脱がされそうになり、慌てて背後に立つ四川を離そうとするが、いとも簡単に腕を取られてしまう。


「邪魔してねえよ。手伝ってやろうとしてんだろ」


「着替えの」と付け足す四川は口元を歪め、ニヒルな笑みを浮かべた。
先程から仏頂面ばっかしてた四川の見せた笑顔に安堵通り越して俺は戦慄する。



mokuji
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