おいでませ原田家

(店長視点)


どれくらい時間が経っただろうか。
久し振りにやってきたその家の門の前、停車した車の中で俺は小さく体を起こす。


「ああ、ようやくついたのか。…疲れたな」

「店長横で爆睡してませんでしたっけ」

「寝疲れたんだよ」

「なら今度眠っていたら叩き起こしましょうか」

「そ、それは嫌だ…」


もしかしてこいつ俺だけが爆睡していたことを根にもっているのだろうか。恐ろしい奴め。

そんな他愛ない会話を交わしながら車を降りた俺は、目の前にどんと佇む日本家屋を見上げた。
地元でも有名なその屋敷には、ミナトさんとの付き合いで何度か訪れたことはある。
とは言っても、門の前までだが。


「しかし、相変わらずでかい屋敷だな」

「…なんか、やけに騒がしいですね」

「そうだな。それに、やけに警備が手薄だ」


以前ここに来たときは門の前には門番らしき男がいたりとやけに物騒なところだという印象があったが、今は見張りも用心棒も門番も誰もいない。
気になったが、それならそれで好都合だ。


「取り敢えず正々堂々といくか」


時川は同調するように無言で頷く。
というわけで、門の前にやってきた俺は閉め切られた扉に取り付けられたインターホンなるものを押した。

しかし、反応はない。


「……」


いやそんなはずがない、と俺はぴぴぴぴぴんぽーんとインターホンを連打する。
それでもやはり誰も出てこない。


「…可笑しいな」

「店長、こっちから入れそうですよ」


そう声を掛けてくる時川の前、俺の身長の何倍にもある大きな扉には、一人の人間が通れそうなくらいの普通サイズの扉が取り付けられているようで。
どうやら隠し扉のようだ。
よくそんなものを見付けたなという驚きとともに、そんな大切そうなところが施錠してないってどうなんだと不安になる。


「まあ、扉には変わりないしな。取り敢えず入るか」


そうさっそく気分を切り替えた俺たちは、原田家敷地内へと足を踏み込んだ。



mokuji
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