たちの悪いお一人様ご案内

「ぅ…んっ、ん、ふ…っ」


ぴちゃぴちゃと濡れた音を立て、湿った舌が精液を拭うように這う。
暖かな唇が突起を掠り、そのまま尖ったそこを吸い上げられればビクンと弓なりのように胸が反り返った。


「んんぅ…っ!!」


早く離してくれ、と首を横に振るが、執拗に乳首を吸い上げる唇は離れず、何度も断続的に吸われてしまえば腰の奥がじんじんと熱くなり、脳髄が甘く疼き出す。


「あぁ…っ、すごい、きゅんきゅん締め付けてくる…っ!…ふふっ、そんなに乳首しゃぶられて気持ちいいの?…とんだお坊ちゃんですねぇ…っ!」

「んっ、んん!っふ、ぅっ!」


中のものが大きくなり、息を荒くした使用人は腰を進めてくる。
先程よりも早まったピストンだが、丁寧に内壁全体を擦り上げ、ずぶずぶと腹の奥まで突き上げられれば頭が白みがかり、思考力が低下していった。
今自分がなにしているのか。何故自分がこんなことをしているのか。自分はなんなのか。
視界と意思疎通方法を封じ込まれたお陰か、妙に実感が湧かず、どこか夢を見ているようだった。


「ほらっ、そんなに我慢しなくてもいいからさぁ!さっさとイキなよ!ねえ!」

「っふ、うんん…ッ!!」


腰を叩き付けられ、ぐりぐりと奥を刺激されれば、いつの間にかに限界までパンパンに膨張したそこから溜まりに溜まった熱が勢いよく飛び出した。
仰向けになった腹部にぼたぼたとかかった自分のそれは酷く熱く感じた。
射精感に浸る暇どころか息をつく暇もなく、止まらないピストンにすっかり熱を帯びた内壁はひくひくと痙攣を起こし、次々とやってくる快感に脳が処理し切れず、軽いパニックを起こしそうになる。


「…っねえ、イッたばかりのくせになに勃起してんの?誰のかもわからないチンポハメられるってそんなに気持ちいいの?」


耳もとで囁かれる声にぞくぞくと体が震えた。
嘘だ、と思っても確認する術はなく、その代わり下半身に痛いくらいの神経が集中しているのも事実で。
嘘だ、認めたくないという気持ちよりも、俺の中では仕方ないだろという文句の方が大きくなる。
こんなことされて勃起しないほうが仕方ないだろ。…うん、我ながらあいつらに毒されてきてる。


「おい、長すぎなんだよ、ずりーよお前」


俺のが二発目の用意ができたとき、ふとどっかから不満の声が聞こえてくる。

そこでまだ二人目だったことを思い出し、あと何人いるんだよ、いつまでこんなことしてりゃいいんだよと不安になってきたときだ。

ふと、朦朧とする意識の遠くから足音が聞こえてきた。


「あ、おい、お前もこいよ!」

「なにやってんすか?」

「見てわかんねえのかよ、憂さ晴らし。心優しい次男様が手伝ってくれんだってよ」


いやいやいや、いやいやいやいや。
誰も自ら望んでそんな御大層なことしてねえよ。聞こえてくる会話に首を横に振るが伝わってるかどうかはわからない。というか傍からみた自分がどんなことになっているのかとか、以ての外だ。考えたくもない。


「っふ、そろそろイキそ……ッ!」


そう、息を漏らした使用人は俺の中から性器を引き抜き、次の瞬間、どぷりと腹の上にぶち撒けられた。
精液で汚れた皮膚が酷く痺れ、蕩けそうで。


「うっわ、てめえらぶっかけ過ぎなんだよ。匂いやべえし」

「ははっ、これじゃさながら便器だな」


笑い声。それが自分に向けられているとわかってても、実感が湧かず、俺はただ受け入れて聞き流すことができない。
ぜってーこいつら泣かす、そう胸の奥で決意し、強くネクタイを噛んだ時。


「…わかってねえな」


騒がしい空間に、低く地を這うような静かな声が響く。
どこか懐かしく、絡みつくような厭味ったらしいその声に目を見開いた時。
どこからか伸びてきた手に顎を掴まれる。
そして、しゅるりと音を立て猿轡を解かれた。


「こんなんしてたら意味ねえし」

「っは、ぁ…ッ」


大量に流れ込んでくる新鮮な空気に、あわてて口を開いて俺はとにかく呼吸を繰り返し肺に空気を送った。
「こいつは泣き叫ぶ声が良いんだろうが」と呆れたように吐き捨てるそいつは「これも」と視界を遮るそれを解く。
音もなく落ちるネクタイに、真っ黒に塗り潰したように暗かった視界にいきなり明かりが射し込んできて、目に沁みる光に堪らず目をぎゅっと瞑った。


「あっ、おい、なにお前勝手に…!」


次々と拘束を解かれる俺に、外野はざわつきはじめる。
それを無視し、俺の目の前にしゃがみこんだそいつは汗で濡れ、肌に張り付いた前髪を指で掬い、掻き分けた。


「こんなぶっさいくな泣き顔が見えなかったらつまんねえだろ」


ゆっくりと瞼を持ち上げれば、そこには憎たらしいくらい整ったいけすかないバイト先の年下先輩…ではなく、執事がいた。



mokuji
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