兄が妹に絶対言っちゃいけない言葉


ハルカは、性格が悪い。
どこをどう間違えたらこう育つんだというほど性格が悪い。
しかもドSだ。
小さい頃からオママゴトと称し、何人もの使用人を虐め、誑かし、次々と辞めさせていった。
甘やかされ、さながら女王様気分のハルカを唯一黙らせることが出来るのは兄だけだ。
因みに歳が近い俺は使用人と同じ扱いだった。
しかし、それは以前の話だ。
今回は、使用人たちみたいにヘコヘコしてまでこいつの悪趣味な遊びに付き合ってられる暇はない。


「どの奴隷にやらせても全然はしゃいじゃってさぁーやっぱ痛め付けるならカナ兄が一番楽しいし嫌がる顔も本当堪んないし、ほら、今日はカナ兄が戻ってくるって聞いて奴隷の方がままごとに付き合ってくれるって言うから、ね?きっとカナ兄も楽しくなるわ、ふふ」


うっとりと頬を染め、指を絡めてくるハルカ。
奴隷の方。
恐らくハルカの下僕と化した使用人のことだろうが、中学の時からたまに知らんおっさんやら同級生やらを首輪に繋いで持ち帰ってはいたぶって遊んでいるハルカのことだ。もしかしたらまた良からぬ輩共を連れ込んでる可能性もある。
どちらにしろ、いい予感がしないのは確かだ。


「冗談じゃねえっ、誰があんな悪趣味な…っおい、離せ!」


ぐいぐいと纏わりついてくるハルカを思いっきり振り払えば、蹌踉めいたハルカはそのままぺたんと尻餅をつく。
そして、


「い…ったぁい…、なにするのよぉ…馬鹿ぁ…」


顔を歪め、じわじわと涙を溜めるハルカ。
ハルカが演技派なのを知っている俺にはこいつの泣き落としは通用にしない。
再会した今日こそは、今日だけは、兄としてこいつにガツンといってやらねば気が済まない。
翔太がいるからか、なんだか不思議と強気になっていた。
外に出て、この家がやはり異常だったと知ったからだろうか。


「カナ兄はそんなことしなかったのにっ、いつもあたしの言うこと聞いてくれてたのに!やっぱり外に行ったせいでおかしくなっちゃんたんだっ!」

「おかしいのはてめえの脳味噌だろうが!なにがおままごとだっ!度が過ぎてんだよ、ドS女がっ!ばーか!」


段々ヒートする俺達のやり取りに、青褪めた翔太が「カナちゃん、ちょっと、それ以上はまじで…」と止めようとしてくる。
それに構わず俺は「大体なぁ」とハルカを睨んだ。


「そんなんだから彼氏できねえんだろっ!」


「あーっ!言っちゃった!あーっ!あーっ!兄が妹に絶対言っちゃいけない発言来ちゃった!」


mokuji
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