仁義なき不毛な言い争い

「なにすんだよ、てめぇ」


唇を拭う四川はじとりとこちらを睨み、威圧的に言い放つ。
つい気圧されそうになるのをぐっと堪え、目の前のやつを睨み返した俺は「それはこっちの台詞だっ!」と言い返した。


「なんなんだよ、お前といいあの店長といい……ホモしかいないのかよこの店はっ!」

「俺はホモじゃねえ!穴があればいいんだよ!」


店長をフォローするどころか逆ギレしてくる四川。
「尚更最悪じゃねーか!」とつい突っ込んでしまう。
するとそんな俺の態度が気に入らなかったようだ。
ぶちっとなにかが切れるような音が聞こえたと思った矢先、手首を掴む四川の指先にぐっと力が込もる。

そして、


「ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃうっせえな、犯すぞ糞チビっ!!」


そうどこぞのチンピラのように怒声を上げる四川に俺はびくっと僅かに硬直して、そして次にその罵詈雑言に眉を寄せた。


「ち……っ!」


チビだと、この俺を……!
高校のときから唯一平均よりは高い身長を長所としていた俺にとってその言葉はプライドを傷付けるもので。


「ちょっと俺よりでかいからって調子乗ってんじゃねーよ、ホモ!ホモ野郎!」


頭にきて、高い位置からこちらを見下ろす四川の顔を空いた手で押さえ無理矢理引き剥がそうすれば「だから俺はホモじゃねえって言ってんだろうが!」といちいち訂正を入れてくる四川に振り払われた。
そして次の瞬間、すぐ隣からダンッと大きな音を立て四川はロッカーを殴る。
その音に怯んだ俺は一瞬抵抗を忘れ、硬直した。


「縛って泣かすぞコラ」


しんと静まり返る男子更衣室内。
地を這うような低い四川の声が静かに俺の鼓膜に響いた。

mokuji
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