原田家ツアー参加者二名

(店長視点)


「というわけで、出発進行!」

「店長、声うるさいです」

「す…すまない…」


店を紀平に任せ、駐車場に停めてある司の車へと乗り込んだ俺たち。
目的地は勿論原田の家だ。
目的は、言わずもがな原田救出だ。
本当なら他人の家の問題に、ましてや未奈人先輩に首を突っ込みたくないのだが先輩の性格を知っている俺としては帰るのを嫌がる原田が無下で仕方ない。
つまりはまあ、お節介だ。あとは原田がいると色々都合がいい。ちょっかいかけようとシフト入れてくるサボり魔が多いことも事実だ。
というわけで、そのサボり魔の一人、時川司の運転する車で向かうことにしたのだが。


「ところで、喉乾きませんか。コンビニ寄っていいです?あと、向こうの方ってトイレあるんですかね。あ、ハンバーガー…」

「時川、お前実はものすごく観光気分だろ」


車を走らせるなりあっちこっち目移りする時川は腹が減っているのだろうか。人の返事も待たずにコンビニ駐車場に停車する時川。


「…そんなことこないですよ。原田さんのことは気になってますけど」


眉を顰める俺に、特にムキになるわけでもなく変わらない調子で答える時川は珍しく口籠る。
なんとなく気になって「けど?」と続きを促せば、窓の外を見つめたまま時川はぽつりと呟いた。


「腹が減っては戦は出来ぬ、っていうじゃないですか」

「お前、戦争を仕掛けるつもりか…!」

「…………」

「そしてここでまさかのノーコメント…!」


時川が冗談を言うようなやつとは思わなかったし、じゃないにしてもなかなか物騒なやつめ。
そこまで原田が気になるのか?青春かこの野郎…と思いながら横目でやつを盗み見ればめっちゃ目がきらきらしてる。あ、違うこれただの好奇心だ。下世話な好奇心の目だ。
 

「ま…まあいい。ならば好きなだけ腹ごしらえをしてくるがいい!」


「って言った側から居ない!」ごほんと咳払いした矢先に車を降りコンビニへと向かう時川。
本当こいつマイペースというかなんなんだこいつは!


「時川、肉まんも頼む!」


道程は長い。

mokuji
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