選択肢→なし (???視点) 「四川、帰るのか」 私服に着替え、店を後にしようとした四川阿奈に気付いた時川司は持っていた本を閉じる。 レジカウンター前。 声を掛けられた四川は立ち止まった。 「ん…あぁ、眠いし」 「大丈夫なのか」 いきなり安否を尋ねられ、ぴくりと眉を顰める四川はじろりと時川を睨む。 「なにが」 「一人で」 「なんで」 「…誰かに襲われたら」 「はぁ?!誰が!」 まさかそんなことを心配されるとは思ってもなくて、思わず全力で聞き返してしまう。 喧嘩は弱くはない方だと自負してるし、どちらかと言えば暴漢側の四川は時川の言葉に顔を引き攣らせた。 そんな四川に顔色一つ変えずに時川は「原田さんのお兄さんに」と即答する。 その言葉に、昼間やってきた原田佳那汰の兄を名乗る男とのやり取りを思い出す。 「んなわけねえだろ。つーかあんなん、本気にすんなよ」 確かに気味が悪いくらい原田佳那汰に執心しているように見えたが、あの男が自分を待ち伏せしているなんて思えなかった。 あの様子じゃ、今も原田佳那汰と一緒にいる可能性の方が高い。 「ならいいけど」とだけ時川は呟き、再度手元の本に目を向ける。 「……じゃ、お疲れさん」 「ん」 なんとなく腑に落ちない気持ちのまま、時川と別れた四川はそのままエレベーターを使い、地上へと出る。 店の外、路地はすっかり暗くなっていた。 晩飯どうしようか、用意するのだるいしどっか食いいくかなあとかぼんやり考えながら店の前に停めてたバイクに歩み寄ったとき。 不意に、肩を掴まれた。 「……あ?」 そのまま後ろを振り返れば、暗い闇の中、スーツ姿の数人の男がそこには立っていた。 全員、顔に見覚えはない。 咄嗟に前方に視線を向ければ、どこから沸いてきたのか自分の周囲には取り囲むようにスーツの男たちが立っていた。 強張った顔の筋肉がぴくぴくと痙攣する。 なんか、原田の兄貴より厄介なの来てんだけど。 |